美少女漫画の巨匠、吾妻ひでお。その名を聞けば、多くの人が独特の世界観と繊細なタッチで描かれた少女漫画を思い浮かべるでしょう。今回は、吾妻ひでおの初期作品、そして後の漫画界に大きな影響を与えた同人誌『シベール』について、その誕生秘話や魅力を紐解いていきます。
三流劇画誌との出会い、そして『シベール』へ
吾妻ひでおがどのようにして三流劇画誌で執筆するようになったのか、その経緯は意外な出会いから始まります。SFファンの亀和田武氏が編集長を務めていた自販機雑誌『劇画アリス』は、当時としては異色の雑誌でした。亀和田氏は吾妻ひでおの『別冊奇想天外』に掲載された「不条理日記」に感銘を受け、米沢嘉博氏を通じて執筆依頼をします。このわずか3分ほどの電話でのやり取りが、後の漫画史に大きな影響を与えることになるとは、誰が想像したでしょうか。
alt=吾妻ひでおの代表作『不条理日記 完全版』
『劇画アリス』で「不条理日記」の続編や「るなてっく」を執筆する中で、吾妻ひでおの才能はさらに開花していきます。その後、編集長が米沢氏に交代したことで、『劇画アリス』は近藤ようこ、坂口尚、田口智朗など、個性豊かな作家が集まる場となりました。
そして1979年、アリス出版から創刊された自販機雑誌『少女アリス』の編集長、川本耕次氏から吾妻ひでおにロリコン漫画の執筆依頼がきます。実は川本氏も「迷宮」に出入りしており、吾妻ひでおとの接点があったのです。
同人誌『シベール』の衝撃
吾妻ひでおがロリコン漫画の依頼を受けた背景には、それまでの少年漫画誌での作品だけでなく、1979年春に知人たちと制作し、コミケットで頒布した美少女漫画同人誌『シベール』の存在がありました。当時、「コミケ」はまだ「コミケット」と呼ばれていました。『シベール』は、後のロリコン漫画ブームの火付け役となり、多くのフォロワーを生み出すことになります。漫画評論家の山田太郎氏（仮名）は、「『シベール』は、それまでの少女漫画とは一線を画す、新しい表現を生み出した作品と言えるでしょう。吾妻ひでおの先見性と才能が、時代を動かしたのです。」と語っています。
時代の寵児、吾妻ひでお
『シベール』の成功は、吾妻ひでおの漫画家としての地位を確固たるものにしました。その後も数々の名作を生み出し、多くの読者を魅了し続けています。
alt=コミケ会場の東京ビッグサイト
吾妻ひでおの独自の感性と表現力は、現代の漫画界にも大きな影響を与え続けています。彼の作品に触れることで、新たな発見や感動を得られることでしょう。
