女優・沢口靖子(60)が35年ぶりにフジテレビの連続ドラマで主演を務める『絶対零度〜情報犯罪緊急捜査〜』が、視聴率の苦戦に直面している。長寿シリーズである『科捜研の女』(テレビ朝日)の終了報道と時を同じくして、国民的女優の動向は日本のテレビ界における大きな社会現象として注目を集めている。かつて高視聴率を誇った人気シリーズでの挑戦は、テレビ局とベテラン女優が直面する新たな課題を浮き彫りにしていると言えるだろう。
視聴率が示す「絶対零度」の苦戦
『絶対零度〜情報犯罪緊急捜査〜』は、11月17日に放送された第7話で視聴率が5.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区・世帯)まで落ち込み、これは『絶対零度』シリーズにおける過去最低の数字を記録した。初回こそ6.5%でスタートしたものの、第2話以降は5%台が続き、その推移は予断を許さない状況となっている。
『科捜研の女』シリーズの終焉か?
奇しくも、『絶対零度』第7話が放送されたこの日、沢口靖子が長年主演を務めてきた『科捜研の女』のシリーズ終了が「週刊女性PRIME」によって報じられた。テレビ朝日が公式に認めたわけではないものの、民放プロデューサーからは「飛ばし記事の可能性もありますが、驚きはありませんでした」との声も聞かれる。
1999年10月に放送開始されて以来、『科捜研の女』は昨年放送されたseason24まで、ほぼ毎年欠かさず放送されてきた。season3以降は平均視聴率が二桁を維持し、2019年度には11.6%と安定した人気を誇っていたが、2021年には9.6%と二桁を割り込み、放送枠移動やスタイルの刷新があった2022年には9.0%に低下。そして昨年はシリーズ最低の平均7.3%を記録するなど、視聴率の下降傾向が顕著となっていた。「そろそろ潮時とは誰もが考えるでしょう」と前述のプロデューサーは語る。
沢口靖子、還暦での「月9」挑戦の功罪
『科捜研の女』の放送がなかった今年、沢口本人や所属事務所である東宝芸能が現状を危惧し、フジテレビの人気シリーズ『絶対零度』への異動、しかも「月9」というゴールデンタイムの枠での主演という大胆な選択をした可能性が指摘されている。フジテレビ側の起用もまた大胆な試みであった。
沢口は今年6月に還暦を迎えており、還暦での「月9」ドラマ主演は女優としては史上最年長となる。しかしフジテレビには成功例があった。今年4月期に放送された『続・続・最後から二番目の恋』では、59歳の小泉今日子と63歳の中井貴一を起用し、若者向けという従来の月9イメージからの転換を図り、一定の成功を収めている。同作は第2シリーズから11年ぶりのドラマ化であったが、『絶対零度』は前シリーズからわずか5年しか経っておらず、元々高視聴率の人気シリーズである。さらに沢口は国民的女優として非常に高い好感度を持つため、様々な問題を抱える中でスポンサー獲得の面でも突破口となるとの勝算があったという。
しかし、『絶対零度 Season1』が平均14.4%、『Season2』が13.1%、沢村一樹主演の『Season3』が10.6%、『Season4』が10.0%と、常に二桁を死守してきた過去シリーズと比較すると、沢口主演の『Season5』の数字は厳しい現実を突きつけている。
沢口靖子の新しいドラマ『絶対零度』での役柄
キャラクターの重複が招いた視聴者の困惑
『絶対零度』というタイトルは、未解決事件を冷徹に追いつめる世界観をよく表現しており、上戸彩や沢村一樹はそれぞれのシリーズでその世界観を巧みに体現してきた。しかし、今回沢口が演じる二宮奈美は、情報犯罪特命対策室で最年長の巡査部長という役どころだ。懸命に走ったりアクションをこなしたりする姿は「痛々しく見える」との意見も聞かれる。
『科捜研の女』での榊マリコとは異なる、意外な一面を見せる沢口靖子
さらに、そこにコミカルな要素や人情路線が加わることで、「『科捜研』の榊マリコにしか思えない」という声も多く、結果として人気シリーズの路線が大きく変わってしまったことが指摘されている。長年演じてきたキャラクターのイメージが視聴者に強く根付いていることが、新たな役柄への適応を困難にしている側面もあるだろう。
まとめ
沢口靖子主演の『絶対零度』が視聴率で苦戦し、その背景には『科捜研の女』シリーズの終焉という報道も重なるという、日本のテレビドラマ界における象徴的な出来事となっている。還暦を迎えてもなお第一線で活躍する沢口靖子の存在感は大きいが、長寿シリーズでのキャラクターイメージからの脱却や、ドラマ制作側の新たな挑戦と視聴者の期待とのギャップが、今回の結果に繋がっていると言えるだろう。女優の新たな一面を引き出し、視聴者の心を掴むコンテンツをいかに生み出すか、テレビ局は常にその課題に直面している。





