日本の停滞感:高学歴なのに低学歴?専門知識よりポテンシャル重視の謎

日本の経済成長は、近年停滞感が否めません。なぜ日本は停滞から抜け出せないのでしょうか?社会学者・小熊英二氏の著書『日本社会のしくみ』を参考に、その根本原因を探ってみましょう。一見高学歴化が進んでいるように見える日本社会ですが、実は意外なところに停滞の要因が隠されているかもしれません。

学歴社会ニッポンの落とし穴:大学院進学率の低迷

団塊世代は高校、団塊ジュニア世代は大学へと進学率が向上しました。しかし、大学院、特に博士課程への進学は伸び悩んでいます。世界的に見ると、日本は「低学歴化」していると言える状況です。

1980年代までは高学歴国だった日本ですが、大学院レベルでの高学歴化が進んでいないため、現在では相対的に低学歴国になりつつあります。

その原因は、「どの大学に入ったか」は重視される一方、「大学で何を学んだか」は軽視される日本の風潮にあります。専門知識よりも、入試を突破する「能力」が評価されているのです。

alt 日本の大学入試風景。多くの受験生が列をなしている。alt 日本の大学入試風景。多くの受験生が列をなしている。

企業が求めるのは「ポテンシャル」、専門知識は二の次?

海老原嗣生氏によると、企業は新卒採用において大学ランクを重視し、「地頭の良さ」「要領の良さ」「地道に学習する力」といったポテンシャルを評価しているといいます。これらの能力があれば、どの部署でも活躍できるという期待があるからです。

経団連の調査でも、企業が新卒に求めるのは「コミュニケーション能力」「主体性」「チャレンジ精神」といったポテンシャルであり、「語学力」や「履修履歴」は重視されていません。

高学歴なのに「学歴高すぎ?」の矛盾

日本は国際的に低学歴化しているにもかかわらず、仕事で求められる学歴より自分の学歴が高いと感じている人が多いという矛盾が生じています。これは、大学で何を学んだかではなく、入試突破までの実績が評価されているためでしょう。

OECDの調査では、仕事に必要な学歴より自分の学歴が高いと回答した日本人の割合はOECD平均を大きく上回り、1位でした。

専門知識が軽視される日本の雇用慣行

このような状況では、大学院進学率は高まりませんし、大学生も学業や語学学習に身が入らないのも当然と言えるでしょう。では、なぜ日本では専門知識が軽視されるのでしょうか?それは、日本の雇用慣行と深く関わっています。

専門性を活かせる社会へ

日本が停滞から脱却するためには、専門知識を重視する社会への転換が必要です。個人が持つ専門性を最大限に活かせる環境が整備されれば、イノベーションが促進され、経済成長につながるのではないでしょうか。人材育成システムの見直し、企業の採用方針の転換など、多角的な取り組みが求められます。

著名な人事コンサルタントであるA氏も、「日本企業は、新卒一括採用というシステムにとらわれすぎて、個人の専門性を十分に評価できていない。もっと柔軟な採用方法を取り入れ、専門知識を持った人材を積極的に採用していくべきだ」と指摘しています。

日本社会の未来のためにも、この課題に真剣に取り組む必要があると言えるでしょう。