台風19号による大雨で、茨城県を流れる那珂(なか)川で国土交通省常陸(ひたち)河川国道事務所が警戒レベル5相当の氾濫発生情報を出さなかった問題で、同事務所が同県内の久慈(くじ)川についても決壊地点3カ所のうち1カ所についての発生情報を出さなかったことが12日、関係者への取材で分かった。発生したとの情報は把握していたとみられる。国交省は14日から検証チームを立ち上げることを明らかにした。
常陸河川国道事務所は10月13日午前5時20分、常陸大宮市小倉、富岡付近の久慈川左岸の2カ所で、川の水があふれる氾濫が発生したとして警戒レベル5相当の氾濫発生情報を発表。その後、久慈川では同市内の右岸での1カ所を含めた計3カ所で堤防の決壊が確認された。
常陸大宮市では13日午前4、5時ごろの段階で市民からの情報提供などで3カ所での氾濫を把握したが、同事務所に伝えていなかった。関係者によると、同事務所の巡回員も3カ所での氾濫を把握していた可能性があるが、うち1カ所で発生情報を出さなかった。
河川管理者は氾濫発生を確認した地点ごとに氾濫発生情報を発表しなければならない。
台風19号では全国の国管理河川のうち、堤防が決壊した7つを含む計15河川で氾濫が確認されたが、那珂川と久慈川の2河川だけが発生情報を出せていなかった。
所管する関東地方整備局は、那珂川で情報が出せなかったことについて「久慈川でも氾濫が起き、現場が混乱していた」と釈明していたが、久慈川でも不備があったことになる。
産経新聞の取材に対し、同整備局は「久慈川についても発生を把握していたのか経緯を現在調べている」と回答した。
■検証チーム設置へ
一方、赤羽一嘉国土交通相は12日の記者会見で、河川情報の伝達方法を見直す検証チームを国交省と気象庁合同で設置すると明らかにした。来年3月までに結論を取りまとめる予定。
常陸河川国道事務所の問題のほか、河川の水位などを伝える国交省サイトがアクセス集中により閲覧しにくくなったことなども検証する。
チームは防災や治水対策の担当者らで構成し、再発防止策や、分かりやすい情報発信の在り方を議論する。堤防強化やダムの水位調節、土砂災害の警戒避難体制づくりといった課題についても、別の有識者会議などの場で、改善に向けた検討を進める。