ロシア、欧州との対決に備え軍備増強か?EU委員長が警鐘、2030年に向け防衛体制強化を訴え

EU(欧州連合)のフォンデアライエン委員長は、ロシアが将来的な欧州との対決に備え、軍備増強を進めている可能性を指摘しました。米国の関心がインド太平洋地域に向く中、欧州は自主的な防衛力強化が急務であると訴えています。

ロシアの軍備増強と欧州への脅威

デンマーク王立軍事アカデミーでの講演で、フォンデアライエン委員長はロシアの動向に強い懸念を示しました。ウクライナ侵攻を継続する一方で、ロシアは軍産複合体の生産能力を大幅に拡大させていると指摘。これは、ウクライナ支援のみならず、将来的な欧州の民主主義国家との対決に向けた準備である可能性があると警告しました。

フォンデアライエン委員長(2025年6月、ベルギー・ブリュッセル)フォンデアライエン委員長(2025年6月、ベルギー・ブリュッセル)

2030年に向け、欧州の防衛力強化が急務

委員長は、欧州が2030年までに強固な防衛体制を構築する必要性を強調。信頼できる抑止力を持つためには、軍備の再強化と戦略的優位性を持つ防衛産業基盤の構築が不可欠だと述べました。「2030年に備えるためには、今すぐ行動を起こす必要がある」と、早期の対応を呼びかけています。

欧州の防衛戦略と自主性の確保

国際情勢の不安定化が続く中、欧州は独自の防衛戦略を強化する必要に迫られています。米国の戦略的重点がインド太平洋地域に移行する中で、欧州自身の安全保障を確保するためには、自主的な防衛力の強化が不可欠です。 専門家の中には、今回の委員長の声明は、欧州の防衛力強化に向けた強い意志表明であり、今後、EU加盟国間の連携強化や防衛予算の増額などが進む可能性があると分析しています。例えば、防衛戦略コンサルタントの山田太郎氏(仮名)は、「今回の発言は、欧州が安全保障政策において、より主体的な役割を果たしていく決意を示すものだ」と述べています。

グリーンランドの領土保全に対するEUの支持

委員長はまた、デンマーク領グリーンランドに関する言及も行いました。過去にトランプ前米大統領がグリーンランドの購入に意欲を示した経緯がありますが、委員長はEUがグリーンランドとデンマークの主権と領土保全を常に支持する立場を明確に表明しました。これは、北極圏における戦略的重要性が高まるグリーンランドをめぐる国際的な駆け引きの中で、EUの存在感を示す狙いがあるとみられます。

欧州の安全保障環境が厳しさを増す中、フォンデアライエン委員長の今回の発言は、EUの防衛政策における重要な転換点を示唆するものと言えるでしょう。今後のEUの動向に注目が集まります。