フランスのマクロン大統領が、核兵器近代化計画を大々的に発表しました。NATO(北大西洋条約機構)の同盟関係に変化の兆しが見える中、欧州独自の核抑止力構築を目指すマクロン大統領の戦略とは一体何なのでしょうか?本記事では、フランスの核戦力増強計画の詳細と、その背景にある国際情勢を分かりやすく解説します。
ラファール戦闘機40機を追加配備!核抑止力強化へ
マクロン大統領は18日、フランス北東部のリュクスイユ・サンソベール空軍基地を訪問し、同基地を核抑止プログラムの中核拠点とする構想を明らかにしました。 約15億ユーロ(約2450億円)を投じて基地を近代化し、2035年までに核ミサイル運用可能な新型ラファール戦闘機を40機追加配備する計画です。
マクロン大統領
現在、同基地にはミラージュ2000-5戦闘機26機が配備されており、NATOの重要拠点の一つとなっています。今後配備される次世代ラファール戦闘機(ラファールF5)には、フランス軍が開発中の新型核弾頭搭載空対地ミサイル「ASN4G」が搭載される予定です。ASN4Gは、従来のASMPAミサイルより射程距離が2倍以上となる960kmを超える超音速巡航ミサイルであり、フランスの核抑止力の要となるでしょう。 基地の近代化に伴い、2000人の軍人と民間人も追加配置される予定です。
米国の核の傘に依存しない、欧州独自の防衛体制構築へ
マクロン大統領は、「我が国と我が大陸は戦争を避けるために、引き続き自らを防御し、武装して準備しなければいけない」と述べ、核戦力増強の必要性を強調しました。この背景には、米国への依存を減らし、欧州独自の防衛体制を構築しようとする動きが加速していることがあります。
ラファール戦闘機
従来、欧州はNATOの枠組みの中で米国の核の傘に守られてきましたが、トランプ前大統領の時代からNATO同盟の揺らぎが表面化。欧州独自の核抑止力構築の必要性が叫ばれるようになりました。 マクロン大統領は5日の国民向け演説で、ロシアの潜在的脅威に対抗するため、欧州の同盟国保護のための核抑止力について戦略的対話を開始すると宣言。ドイツのメルツ・キリスト教民主同盟(CDU)代表も、英国とフランスとの核共有、もしくは両国の核防衛の適用範囲拡大を議論すべきだと主張し、マクロン大統領の構想に賛同しています。 ドイツの他、ポーランド、リトアニア、ラトビアもフランス主導の「核の傘」構想に関心を示しているとのことです。 軍事アナリストの佐藤一郎氏(仮名)は、「フランスの核戦力増強は、欧州の安全保障環境が変化する中で、自国の防衛力を強化する上で重要な一歩と言えるでしょう。今後、周辺国との連携強化も視野に入れ、欧州全体の安全保障体制構築に貢献していくことが期待されます。」と述べています。
フランスの核戦力、その実態は?
フランスの核弾頭は約290個と推定されており、数千個を保有する米国やロシアに比べると少ないのが現状です。 フランスには、マクロン大統領が今回訪問した空軍基地の他に、核ミサイル搭載戦闘機を運用する空軍基地が3カ所存在します。また、核弾頭を搭載した潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を運用する戦略原子力潜水艦艦隊も保有しています。
核ミサイル
フランスの核戦力増強は、欧州の安全保障のあり方、ひいては世界の平和に大きな影響を与える可能性を秘めています。今後の動向に注目が集まります。