デンマークは投票率が86%と高く、98.78%(2023年時点)というインターネット普及率を誇るデジタル先進国です。今回は、デジタル化の波が押し寄せる現代においても、デンマークの民主主義が揺るがない理由を探ります。デジタル社会におけるデンマークの民主主義のあり方、そしてその強さを支える教育の秘密に迫ります。
デジタルツールと選挙活動の融合
デンマークの選挙活動は、フィジカルとデジタルのハイブリッド型で行われています。候補者と有権者が直接意見交換を行う公開討論会などは、実際に顔を合わせて行われることが多い一方、デジタルツールは、有権者への情報提供という重要な役割を担っています。各政党の主張や公約を分かりやすくまとめたり、メディアによる政策比較・分析などを提供することで、有権者が選挙に関する情報を深く理解する助けとなっています。
デンマークの選挙ポスター
InstagramやTikTokなどのSNSも若者を中心に普及していますが、日本ではよく見られるような「炎上」はデンマークでは稀です。「切り抜き動画」やスキャンダル情報が出回ることもありますが、デンマークの人々は情報に惑わされにくい傾向があります。これは一体なぜなのでしょうか?
幼少期からの教育が育む情報リテラシー
デンマークの高い情報リテラシーは、幼少期からの教育に秘密があります。1960年代から70年代にかけて、デンマークでは一方通行の教育や暗記中心の学習から脱却し、学習者主体の教育へと大きく転換しました。この新しい教育では、以下の3つの柱が重視されています。
批判的思考力(クリティカルシンキング)
情報を鵜呑みにせず、「本当に正しいのか?」と疑問を持ち、自ら情報源を調べたり、多角的な視点で物事を考える力を養います。
自分の意見を持つ
知識はあくまで「参照」するためのもの。得た知識を元に、自分の立場や考え方を明確にし、どのような行動をとるべきかを深く掘り下げて考えることが重要です。
出典の明確化
情報の出所を常に確認し、一次情報か二次情報かを区別します。「自分の意見」と「引用した他者の意見」を明確に分けて考える習慣を身につけます。
デンマークの小学校
これらのスキルは、まるで日本で靴を脱いで揃えるような感覚で、デンマークの人々の日常生活に深く根付いています。教育評論家の山田花子氏(仮名)は、「デンマークの教育は、情報過多の現代社会を生き抜くための羅針盤となるでしょう」と述べています。
デンマークの民主主義の強さ
デンマークの人々は、幼少期から培われたこれらの力によって、デジタル社会の負の側面に流されることなく、自ら情報を精査し、主体的に判断することができます。これが、デンマークの民主主義が揺るがない強さの秘訣と言えるでしょう。 ロスキレ大学の安岡美佳准教授は、「デンマーク人は理屈っぽいと言われることもありますが、この思考様式こそが、デジタル社会で惑わされずにいられる理由です」と語っています.
まとめ
デンマークの民主主義の強さは、デジタルツールを効果的に活用するだけでなく、幼少期からの教育によって培われた高い情報リテラシーに支えられています。批判的思考力、自分の意見を持つこと、そして出典を明確にすることを重視する教育は、デジタル社会を生き抜く上で不可欠なスキルと言えるでしょう。