デジタル化の波が押し寄せる現代において、日本の新年の伝統である年賀状にも大きな変化が訪れています。「年賀状じまい」という言葉が浸透し、年賀状のやり取りを終える人が増える一方で、その選択が新たな人間関係の摩擦や心理的な負担を生み出している現状が浮き彫りになっています。本記事では、「年賀状じまい」の背景にある社会の変化と、それに伴うマナーの問題について考察します。
年賀状文化の変遷とデジタル化の影響
かつて日本において、年賀状は新年の挨拶を交わす上で不可欠なツールでした。しかし、スマートフォンの普及とともにLINEやSNSでの手軽な挨拶が一般化し、親しい友人から仕事関係者まで、デジタルメッセージで新年の祝意を伝える人が急増しています。
この変化は、年賀はがきの発行枚数にも如実に表れています。2003年のピーク時には約44.6億枚が発行されましたが、その数は年々減少し続け、2026年用には約7.5億枚と、ピーク時のわずか6分の1にまで縮小しました。この市場規模の縮小は、年賀状が持つ伝統的価値観が大きく揺らいでいることを示しています。
年賀状じまい後のトラブルを表すスマートフォンと年賀状
「年賀状じまい」増加の背景
多くの人が「年賀状じまい」を選択する背景には、単なるデジタル化の進展だけではない、複数の要因が存在します。まず挙げられるのは、年賀状作成に伴う「労働的な負担」です。年末の多忙な時期に、宛名書きやメッセージの考案、投函といった一連の作業は、多くの人にとって大きな重荷となっています。
さらに、「費用的な負担」も無視できません。ピーク時の2003年には1枚50円だった年賀はがきは、現在では85円にまで値上がりしています。物価高騰が続く中で、形式的なやり取りとなりつつある年賀状のために、まとまった費用を捻出することに抵抗を感じる人も少なくありません。こうした背景から、「年賀状じまい」は合理的な選択として広がりを見せています。
「年賀状じまい」後の予期せぬトラブルとSNSでの反響
しかし、「年賀状じまい」を通知したにもかかわらず、相手から年賀状が届き続けるという、予期せぬトラブルも発生しています。今年の年始には、自身の「年賀状じまい」を伝えたにもかかわらず年賀状が届き続け、その対応に心理的な負担を感じているという投稿がSNSで物議を醸しました。
相手からは「返信は不要」と添えられている場合もありますが、受け取るだけで返さないことに「気まずさ」や「小さな罪悪感」を抱く人は少なくありません。この投稿には多くの共感が寄せられ、「毎年処分するのも負担」「送りつけるのは押し付け」「正月早々嫌な気持ちになる」といった声が上がりました。これは、「送る自由」と「送らない自由」が衝突し、新たなマナーのあり方が問われている現状を示しています。
まとめ:新しい時代の挨拶文化に向けて
「年賀状じまい」は、時代の変化とともに生まれた合理的な選択ですが、それが引き起こす新たな人間関係の課題もまた、現代社会が直面する現実です。年賀状のやり取りが減少する中で、送る側と受け取る側の双方にとって、互いの意向を尊重し、気持ちよく新年の挨拶を交わせるような、新しい時代のマナーやコミュニケーションの形が求められています。形式にとらわれず、心からの気持ちを伝えることのできる方法を見つけることが、これからの課題となるでしょう。





