地下鉄サリン事件30年:未回収の賠償金と教団の「資産隠し」の闇

地下鉄サリン事件から30年。今なお被害者とその家族は、深い傷を抱えながら、事件の真相究明と十分な賠償を求め続けています。オウム真理教の後継団体による被害弁済は遅々として進まず、未回収の賠償金問題、そして教団による巧妙な「資産隠し」の実態が改めて浮き彫りになっています。この記事では、事件から30年目の現状を改めて見つめ、被害者救済への課題と展望を探ります。

オウム真理教事件の賠償金:10億円以上が未回収

地下鉄サリン事件をはじめ、数々の凶悪事件を引き起こしたオウム真理教。事件から30年が経過した現在も、被害者への賠償は完全には履行されていません。「オウム真理教犯罪被害者支援機構」理事長の宇都宮健児弁護士は、後継団体「アレフ」への賠償請求の難しさについて訴えています。機構によると、未だに10億円以上の賠償金が未回収のままとなっています。

献花後、報道陣の取材に応じる高橋さん(右から2人目)、宇都宮弁護士(右端)ら献花後、報道陣の取材に応じる高橋さん(右から2人目)、宇都宮弁護士(右端)ら

オウム真理教は1996年に破産し、被害者約1200人に対して約38億円の債務を負いました。後継団体であるアレフは2000年に被害者への支払い義務を引き受けることで破産管財人と合意しましたが、実際には全額の支払いは実現していません。

教団の「資産隠し」の実態:巧妙な手口で賠償を逃れる

機構はアレフに対し、未払い賠償金の支払いを求める訴訟を起こし、2020年に勝訴が確定しました。しかし、強制執行を行っても回収できたのはアレフ所有の現金などわずか4200万円にとどまっています。公安調査庁の調査によると、アレフは関連法人の名義で多額の現金などを管理し、「資産隠し」を行っている疑いが強いとされています。

アレフは、機構による差し押さえを免れるため、資産を関連法人に移転させるなどの巧妙な手口を用いていると指摘されています。 専門家の中には、「このような組織的な資産隠蔽は、法の網の目を潜り抜ける高度な戦略に基づいて行われている可能性が高い」と警鐘を鳴らす声もあります。例えば、架空の取引や複雑な組織構造を利用することで、資産の実態を隠蔽し、追及を困難にしていると考えられます。

オウム真理教関連施設への家宅捜索の様子オウム真理教関連施設への家宅捜索の様子

公安調査庁は、アレフが国に報告していない資産は約7億円に上ると推計しています。被害者救済のためには、こうした「資産隠し」の実態解明と、より効果的な回収策が不可欠です。

今後の課題:被害者救済に向けた取り組み

地下鉄サリン事件から30年が経過した今も、被害者とその家族は事件の傷跡に苦しみ、賠償を求め続けています。教団の「資産隠し」の実態解明、そして未回収の賠償金問題の解決は喫緊の課題です。国や関係機関は、被害者救済に向けたより一層の努力が求められています。 法的措置の強化や、情報収集・分析能力の向上など、多角的なアプローチが必要となるでしょう。

事件の風化を防ぎ、被害者の声に耳を傾け続けることが、真の救済への第一歩となるはずです。