兵庫県は2026年度に60億円の歳入不足に陥り、「許可団体」となる見込みです。県は阪神・淡路大震災関連の県債償還や金利上昇を理由に挙げていますが、本当に震災だけが原因なのでしょうか? 本記事では、兵庫県の財政状況を詳しく解説し、専門家の意見を交えながら、その課題と展望を探ります。
震災関連債務の実態:減債進むも歳出抑制が課題
兵庫県は震災復興のため1兆3000億円の県債を発行しましたが、現在の残高は1800億円余りにまで減少しています。兵庫総合研究所政策顧問の中川暢三氏によると、震災関連の借金返済はほぼ完了しており、財政難の根本原因は別にあります。
兵庫県立芸術文化センター
中川氏は、創造的復興の名の下に建設された数々の施設、例えば兵庫県立芸術文化センターや人と防災未来センター、兵庫県立美術館などを問題視しています。これらの施設の運営・維持管理費が大きな負担となっているのです。新長田駅前の再開発事業も、空き店舗が多く、家賃や管理費が重荷となっています。
創造的復興の功罪:ハコモノ行政のツケ
震災復興を機に整備された施設は、確かに地域活性化に貢献した側面もあります。しかし、その一方で、巨額の維持管理費がかかり、財政を圧迫しているのも事実です。中川氏は、WHO神戸センター誘致のために建設された国際健康開発センタービルを例に挙げ、「30年間で135億円もの税金が投入される馬鹿げた事業」と批判しています。
神戸の中心部である三宮や元町の再開発が後回しになったことも、経済的な地盤沈下を招いた一因と言えるでしょう。震災復興に重点を置くあまり、既存の都市基盤整備がおろそかになった結果、新たな課題が生じているのです。
天下り問題と知事の手腕:改革への道筋は?
兵庫県には33もの外郭団体が存在し、県職員OBの天下り先となっています。これらの団体が財政負担を増大させていると中川氏は指摘します。歴代知事が総務省出身者であることも、国への依存体質を強め、自主的な財政改革を阻害してきた要因の一つかもしれません。
斎藤知事は外郭団体の改革や分収造林事業の債務整理など、一定の成果を上げています。しかし、中川氏は「行財政改革への取り組みが不十分」と評価し、抜本的な改革を求めています。
未来への展望:持続可能な財政運営に向けて
兵庫県は歳出の効率化を図り、限られた財源を有効活用していく必要があります。民間企業の好調な業績に支えられた税収増に頼るのではなく、将来の成長につながる分野への投資を強化していくことが重要です。
新長田駅南地区再開発
斎藤知事は、阪神・オリックス優勝パレードの開催費用に関する疑惑など、いくつかの課題に直面しています。これらの問題に真摯に向き合い、県民の信頼を回復することが、兵庫県の未来を左右する鍵となるでしょう。県民一人ひとりが財政問題に関心を持ち、活発な議論を展開していくことが、より良い兵庫県を築くために不可欠です。