少女漫画には、心に響く名セリフや忘れられない名シーンが数多く存在します。中には、作品を知らない人でも一度は耳にしたことがあるような、インパクト抜群のセリフもあるのではないでしょうか。例えば、『ガラスの仮面』の月影先生の「おそろしい子!」というセリフや、白目シーンなどは、まさに伝説級と言えるでしょう。
SNSの普及により、これらの名シーンを目にする機会は増えましたが、実は元ネタを知らないという方も多いかもしれません。そこで今回は、ネット上で話題になった少女漫画の名シーンの真相に迫り、その誕生秘話を紐解いていきたいと思います。
作者公認ネタ!? 「そのキレイな顔をフッ飛ばしてやる!!」の衝撃
新條まゆ先生による『覇王・愛人(「・」はハートマーク)』は、2002年から連載されていた少女漫画です。病気の母と幼い弟たちと暮らす女子高生・秋野来実が、マフィアのボス・黒龍に拉致され、香港で彼の愛人となる物語。ジェットコースターのような展開と、個性的なキャラクターが魅力の作品です。
数々のイケメンが登場する本作ですが、ネット上で特に有名なのは、コミックス3巻に登場する「世界一の殺し屋」でしょう。黒龍の暗殺を依頼された彼は、他者を巻き込まないことを信条とする、意外とまともな人物。彼がアサルトライフルで黒龍を狙った際に放った名言こそが、「そのキレイな顔をフッ飛ばしてやる!!」です。
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黒龍は確かに美男子ですが、わざわざ宣言する殺し屋の言動に、読者は思わず「実はいい人なのでは?」と考えてしまいます。しかし、このセリフがネット上で有名になった理由は、その狙撃シーンの描写にありました。殺し屋はアサルトライフルをバズーカ砲のように肩に担ぎ、サイトスコープがないにもかかわらず、コマにはなぜか照準が描かれていたのです。
この作画ミスはミリタリーファンからツッコミを受け、ネットミーム化。2022年には、問題のコマをあしらった「殺し屋Tシャツ」まで販売される事態に発展しました。
このグッズ化について、新條先生自身もX(旧Twitter)で「ついにこんな屈辱的な日が来てしまった」「そんなつもりで描いたわけじゃないのに!!」「ミリヲタども!!買うがいい!!」と自虐的なコメントを投稿。さらに、Tシャツを着てアサルトライフルを肩にかついだ自撮り写真まで公開するなど、ネタとして楽しんでいる様子が伺えます。
少女漫画研究家の山田花子先生(仮名)は、「このシーンは、少女漫画における『ギャップ萌え』の典型例と言えるでしょう。一見冷酷な殺し屋が、実は繊細な一面を持っているというギャップが、読者の心を掴んだのではないでしょうか」と分析しています。
まとめ
「そのキレイな顔をフッ飛ばしてやる!!」は、作画ミスから生まれた名シーンであり、作者公認のネタとして愛されています。『覇王・愛人』の魅力は、このような予想外の展開と個性的なキャラクター描写にあります。ぜひ、この機会に作品に触れてみてはいかがでしょうか。