米国トランプ前政権の同盟国軽視政策の影響が未だ尾を引き、西側諸国の空軍力の中核を担うはずだった第5世代ステルス戦闘機F-35の将来に暗雲が立ち込めている。同盟国における米国への不信感が高まり、F-35の導入計画を見直す動きが広がっているのだ。
米国への不信感、F-35導入にブレーキ?
かつて電気自動車の寵児だったテスラ社が、様々な要因から不買運動の対象となったように、F-35も同盟国から敬遠される「新たなテスラ」となる可能性が懸念されている。英日刊テレグラフ紙は、トランプ前政権下での欧州軽視、ロシアへの接近姿勢が米国の安全保障の傘に対する信頼を損ない、同盟国の怒りを買っていると指摘。F-35の追加注文が中断される可能性も否定できない状況となっている。
F-35戦闘機
さらに、トランプ前大統領が第6世代戦闘機F-47の開発計画を発表した際、同盟国には機能を制限したバージョンを供給すると発言。「いつかは彼らが同盟国ではなくなるため」という理由からだが、この発言は同盟国に大きな衝撃を与えた。F-35についても、米国が将来にわたって必要なサポートを提供してくれるのかという疑念が浮上している。仮にF-35を購入したとしても、米国が修理部品やソフトウェアのアップデートを停止すれば、戦闘機はただの鉄屑と化してしまうからだ。
米国とロッキード・マーチン社がF-35に「キルスイッチ」と呼ばれる遠隔操作で戦闘機を無力化できる機能を仕込んでいるのではないかという噂も囁かれている。ロッキード・マーチン社はこの説を否定しているものの、同盟国の不安は拭いきれていない。
カナダ、ポルトガル、ドイツ…F-35離れの動き
こうした懸念から、F-35の導入計画を見直す国が続出している。88機のF-35導入を計画していたカナダは、最近になって計画の見直しを表明。ポルトガルのメロ国防相もF-35の購入を保留すると発表し、NATOにおける米国の最近の立場を懸念材料として挙げている。ドイツの元外交官ウォルフガング・イッシンガー氏も、ドイツ政府が35機のF-35発注を取り消す可能性があると予測している。
F-35戦闘機のエンジン
かつて軍事装備の多くを米国に依存していた欧州諸国は、現在、独自の防衛産業育成に力を入れている。この動きはフランスの航空機産業に追い風となり、マクロン大統領はダッソー社の戦闘機ラファールを積極的に売り込んでいる。
代替機はあるのか? 性能とコストのジレンマ
ユーロファイター・タイフーン、サーブ・グリペン、韓国のKF-21など、F-35の代替となる戦闘機は存在する。しかし、航空宇宙アナリストのジョン・ヘムラー氏は、これらの戦闘機はF-35に比べて性能が劣ると指摘。性能を重視するか、コストを重視するか、難しい選択を迫られている。
今後のF-35、そして世界の空軍力はどうなる?
米国の同盟国におけるF-35離れの動きは、世界の空軍力のバランスに大きな影響を与える可能性がある。今後のF-35の行方、そして各国の防衛戦略に注目が集まっている。