石破茂首相が大ピンチだ。
1人10万円相当の商品券をお土産として15人の1年生議員に配ったことで、政治資金規正法違反ではないかという批判を浴びている。
金額10万円の商品券は一般社会の「お土産」の常識とはかけ離れている。
これが政治資金であると認定されれば、政治家個人への政治資金の寄付となり、政治資金規正法に違反し、即アウトだ。
政治資金の定義は曖昧だが、黒に近いグレーという見方が広がる。
そもそも、「原資がポケットマネーで、趣旨はただのお土産」と言えば違法ではないということであれば、全ては当事者の一存で違法なものが合法になってしまう。規正法の意味がないではないかという指摘に頷く人は多いだろう。
商品券の配布は1回ではないという。仮に同規模のものが10回あれば、1500万円で、「ポケット」マネーとはとても言えない額だ。
そこで出てきたのが、原資は、領収書不要でいつ誰に渡したかを公開しなくてよい官房機密費という説だ。いかにもありそうではないか。
この問題が明るみに出た後の石破首相の対応もまずかった。
政治資金ではない、政治活動ではない、したがって違法ではないという形式論理を言い募り、食い下がった記者に、政治資金規正法の何条に違反するのか言ってみろと逆質問。誠意ある政治家だと思っていた国民を驚かせた。
今回の商品券問題は、裁判では無罪かもしれないが、今国民の審判を受ければ、ほぼ100%アウトということになるだろう。
直近の3大全国紙、読売、朝日、毎日各紙の世論調査でも、内閣支持率は23~31%に急落。不支持率も58~64%と極めて高水準で、国民の意思が明確に表れた。
これほど国民の支持を失った石破政権だから、野党は、石破首相に総辞職を迫っても良いはずだ。
そこに追い込むために一番簡単なのは、予算を通さないことだった。
しかし、日本維新の会は早々に、参議院で予算案の再修正案に賛成のうえ、衆議院に回れば同意するという方針を表明してしまったので、この選択肢はなくなった。
こうなると、石破首相を引き摺りおろすのは難しい。
自民党内に石破おろしの動きはあるものの、国民の強い支持が見込める新しい候補もない中で、党内でゴタゴタを起こせば、さらに国民の支持を失い夏の参議院選挙で大敗する可能性がある。そのため、すぐに石破おろしが本格化することにはならないだろう。
一方、最大野党の立憲民主党にすぐに内閣不信任案を出す様子はない。小川淳也幹事長は、「提出時期についてそう簡単に言える状況にはない」と慎重な言い回しにとどめた。今のまま石破首相批判を続けるほうが、参院選に向けて戦いやすいというのが理由の一つだ。