関西生コン事件をご存知でしょうか？2018年以降、ミキサー運転手の労働組合「連帯労組関西地区生コン支部」（以下、関生）の組合員が次々と逮捕された事件です。インターネット上では真偽不明の情報が飛び交い、一方で起訴された被告には無罪判決も相次いでいます。大手メディアがほとんど報じてこなかった、この戦後最大規模の労働事件の真相に迫るドキュメンタリー映画『労組と弾圧』が公開されました。ギャラクシー賞にも入選したテレビドキュメンタリーの劇場版です。本記事では、この映画を通して見えてくる関生事件の実態、そして労働組合と経営側、警察との複雑な関係性について解説します。
関生とは？そして事件の発端
関生は、生コンを運ぶミキサー車の運転手らで構成される産業別労働組合です。企業ごとの労働組合が多い日本において、同じ職種の労働者が職場の枠を超えて団結している点が特徴です。その背景には、生コン業界特有の事情があります。生コンは出荷から90分で固まるため、こまめな出荷が必要で大量生産に向きません。そのため、生コン業者は中小企業が多い一方、原料のセメントメーカーや発注者のゼネコンは大手中心です。結果として、生コン業者は大手企業に有利な取引条件を押し付けられることが多く、ミキサー運転手は「練り屋」と呼ばれ、さらに弱い立場に置かれてきました。関生は1965年に、こうした状況を打破するために結成されました。賃上げや正社員化を求め、大手企業の支配構造との闘いを続けてきました。
ミキサー車
経営側との共闘と決裂、そしてストライキへ
かつて関生は、経営側の団体「大阪広域生コン協同組合」と共闘関係にありました。業界全体の利益確保と賃上げを目的とした共闘でしたが、長続きはしませんでした。2017年、関生は約束された賃上げを求めて全面ストライキに突入。セメント会社の前でトラックを止め、運転手に出荷停止への協力を呼びかけました。このストライキをきっかけに、関生と経営側の対立は激化していきます。映画では、会社側の人物が労組員とのもみ合いの中で、まるで第三者に向けて自らの正当性を主張するような発言をしている場面が映し出されます。この場面は、関生事件の複雑な構図を象徴的に示しています。
戦後最大規模の労働事件へ：逮捕者81人
ストライキ後、事態は急展開を見せます。2018年以降、関生の組合員が次々と逮捕され、最終的に逮捕者は81人にものぼりました。これは戦後最大規模の労働事件と言われています。映画では、逮捕の背景に、経営側と警察権力による組織的な組合潰しがあったのではないかという疑惑が提示されます。「関生は労働組合ではない」「反社会的勢力だ」というイメージが、捜査を通じて意図的に作り上げられた可能性が示唆されています。労働組合への弾圧、表現の自由の制限、そして司法の独立性…様々な問題が絡み合い、事件は複雑な様相を呈しています。
ドキュメンタリー映画『労組と弾圧』が問いかけるもの
『労組と弾圧』は、単なる労働争議の記録にとどまらず、現代社会における労働者の権利、そして報道の自由といった重要なテーマを私たちに問いかけています。映画の中で描かれる関生組合員のインタビューや裁判の様子は、私たちに多くのことを考えさせます。 労働運動の歴史、そして現代社会における労働組合の役割について、改めて見つめ直す必要があるのではないでしょうか。
まとめ：『労組と弾圧』から学ぶこと
『労組と弾圧』は、関西生コン事件を通して、現代日本の労働問題の闇に光を当てた作品です。この映画を見ることで、私たちは労働者の権利、報道の自由、そして司法の独立性といった重要な問題について深く考えるきっかけを得ることができます。ぜひ一度、この映画をご覧いただき、ご自身の目で事件の真相、そして日本の社会が抱える問題点について考えてみてください。
