夫婦が離婚する際に取り決める養育費や、別居の際の生活費など婚姻費用について、最高裁の司法研修所が社会情勢の変化を踏まえて算定方法を見直し、12月23日に公表することが分かった。現在の算定方法に基づく養育費や婚姻費用については低額すぎるとの批判があったが、新たな算定方法では夫婦の収入などによっては増額される可能性もあるとみられる。
離婚訴訟で養育費を決める際などには、裁判官らの研究会が平成15年に法律雑誌に発表した簡易算定方式が使われている。夫婦の収入と子供の年齢や人数ごとに、子供と離れて暮らす親が支払うべき養育費の目安を表で示したもので、素早い紛争解決につながるとして広く定着している。
ただ、この算定方式では、夫婦の総収入から税金や経費を差し引いた金額を「基礎収入」として養育費を算出。基礎収入は総収入の4割程度となるため、「養育費が低すぎる」といった指摘も出ていた。
一方、日本弁護士連合会は28年11月、新たな算定方式を独自に発表。総収入から差し引く経費に住居費や保険料を含めないことで、基礎収入が総収入の6、7割程度となり、算出された養育費が現行の約1・5倍となる内容だった。
司法研修所は昨年7月から算定方法の見直しに着手。東京、大阪両家裁の裁判官4人を研究員に選び、養育費などの算定に関する実証的な研究を行ってきた。近くまとめる研究報告は「(4人の)裁判官個人の見解だが、実務においては一定の重みがある」(ベテラン裁判官)ものになる。
新たな算定方法では、近年の家庭の支出傾向を踏まえ、増額される場合もあるが、夫婦の収入などによっては現状と変わらないケースもあるとみられている。