2025年6月21日以降、鹿児島県・トカラ列島近海では地震活動が活発化し、震度1以上の有感地震が1000回を超える群発地震が観測されている。さらに7月3日にはマグニチュード5.5の地震が発生し、十島村の悪石島で震度6弱を記録した。この一連の地震を受け、SNS上では「トカラの法則」を持ち出し、「大地震の前兆ではないか」との不安が広がっている。特に「7月5日に大災害が起こる」という投稿が拡散されており、その根拠として漫画『私が見た未来』の存在が挙げられている。
トカラ列島の島で噴火し、噴煙を上げる火山の様子
「大地震を予言した」とされる漫画の影響
『私が見た未来』は、漫画家のたつき諒氏が1996年に発表した作品で、作者が見たという予知夢を基に描かれている。特に東日本大震災を予言したかのような内容が含まれていたことから、インターネット上で「予言の書」として大きな話題となった。2021年に発行された『私が見た未来 完全版』では、「2025年7月に壊滅的な津波」を見る夢が描かれ、これが「次にくる大災難の日は『2025年7月5日』」という解釈につながった。これに加え、トカラ列島での群発地震の後に日本国内の別の場所で大地震が発生するという「トカラの法則」と呼ばれるウェブ上の説が、この予言と結びつけられ、不安を増幅させる要因となっている。
「私が見た未来 完全版」の表紙画像、2025年7月5日が大災難の日と示されている
社会的影響の拡大と気象庁の公式見解
この「7月5日大災害説」という都市伝説は、単なるネット上の噂に留まらず、現実社会にも影響を及ぼしている。例えば、放送作家の鈴木おさむ氏が「不安だから」という理由で7月5日に息子と共に都内を離れるとSNSで表明し、その行動が賛否両論を呼んだ。また、中国大使館が日本への旅行や留学、不動産購入について慎重な検討を推奨したことが広まるなど、海外からの観光客減少にもつながりかねない懸念が出ている。メディアもこれらの動きを報じることで、デマは社会的な関心事となった。
こうした状況に対し、気象庁は繰り返し「7月5日に大地震が起こる」という説を否定している。7月3日の記者会見でも、気象庁は「まず『トカラの法則』というものは科学的ではありません」と断言。さらに、現代の科学技術では地震の予知は不可能であることを明確に指摘し、「デマです」と述べ、根拠のない情報に惑わされないよう呼びかけている。
気象庁は、地震に関する正確な情報を提供するため、引き続き観測データを基にした科学的な分析結果を公開していく方針を示している。