ワンピース、日曜夜へ――国民的アニメの大胆な戦略転換

国民的アニメ『ONE PIECE(ワンピース)』が、長年親しまれてきた日曜朝の放送枠を離れ、2025年4月から日曜夜に放送時間を変更します。この大きな転換は、一体何を意味するのでしょうか?メディア環境の変遷、そしてワンピースのコンテンツ戦略を読み解きながら、その背景を探っていきましょう。

ワンピース、新天地へ!日曜夜放送の狙いとは?

原作との連動でファンを熱狂させる戦略

2024年12月のジャンプフェスタ2025で発表されたワンピースの新放送時間は、日曜夜。集英社は「アニメを見たらすぐジャンプ」というコンセプトを掲げています。これは、日曜夜にアニメを視聴した後に、月曜日発売の週刊少年ジャンプを読んでもらうための戦略でしょう。特に、近年利用者が増加している電子版「少年ジャンプ+」では、日付が変わった瞬間に最新話が読めるため、アニメ放送終了後すぐに原作漫画を読めるというシームレスな体験を提供できます。
alt ワンピースと少年ジャンプ+の連動alt ワンピースと少年ジャンプ+の連動

メディア戦略コンサルタントの佐藤一郎氏は、「この戦略は、原作完結に向けた盛り上げの一環と言えるでしょう。ワンピースは連載25年を超え、作者の尾田栄一郎氏も『最終章に入った』と明言しています。アニメと原作を連動させることで、ファンの熱量を高め、クライマックスに向けて大きなうねりを作り出そうとしているのです」と分析しています。

鬼滅の刃の成功体験を踏襲

また、日曜夜11時15分~11時45分という放送枠は、以前『鬼滅の刃』が放送されていた時間帯です。この枠で成功を収めた実績があるため、ワンピースにとっても好都合な時間帯と言えるでしょう。ジャンプ読者にも馴染みのある時間帯であり、視聴習慣への移行もスムーズに進みそうです。

テレビ放送の新たな価値――「同期性」で視聴体験を進化

配信時代におけるテレビの役割

NetflixやAmazonプライム・ビデオなどの配信サービスの普及により、いつでもどこでも好きなアニメ作品を視聴できるようになりました。もはや、アニメを見るためだけにテレビの前に座る必要はなくなっています。では、この時代にテレビ放送はどのような役割を担うのでしょうか?

その答えの一つが「同期性」です。SNSでリアルタイムに感想を共有できる現代において、全国の視聴者が同じコンテンツを同時に視聴する体験は、テレビ放送ならではの価値と言えるでしょう。

ラピュタ「バルス」現象に見る「同期性」の力

「同期性」を象徴する例として、日本テレビの金曜ロードショーで放送される『天空の城ラピュタ』が挙げられます。クライマックスシーンで「バルス」というセリフと共にSNSが盛り上がり、トレンド入りする現象は、まさに「同期性」の力を示しています。
alt ラピュタのバルスシーンalt ラピュタのバルスシーン

かつて家族や友人とテレビを囲んで同じ番組を見ていた「日常」が、今では同じコンテンツを好む見知らぬ人々とオンラインで繋がり、同じ時間に同じ感情を共有する「非日常」へと変化しました。アニメ評論家の山田花子氏は、「この共有体験こそが、配信時代におけるテレビ放送の新たな価値と言えるでしょう」と指摘しています。

まとめ:ワンピース新時代への船出

ワンピースの放送時間変更は、単なる枠移動ではなく、メディア環境の変化に対応した戦略的な転換です。原作との連動、そして「同期性」を活かした視聴体験の提供により、ワンピースは新たな時代へと舵を切ります。この挑戦が、どのような波紋を広げるのか、今後の展開に注目です。