フジテレビを41年間率いてきた日枝久氏がついに退任。中居正広氏の女性トラブルに端を発する業績悪化が引き金となった今回の退任劇ですが、その背景には長年にわたる様々なひずみがあったと指摘されています。中でも、株主総会における「やらせ質疑」の実態は、企業統治の観点から大きな問題と言えるでしょう。今回は、ジャーナリスト中川一徳氏の告発記事を元に、その驚くべき内幕に迫ります。
株主総会は誰のためのもの? 日枝体制下の歪んだ実態
株主総会は、企業の最高意思決定機関として、株主の声を経営に反映させる重要な場です。近年はIR型総会への移行が進み、株主との建設的な対話が一層重視されています。しかし、日枝体制下のフジテレビでは、株主総会が本来の機能を果たしていたと言えるでしょうか?
2005年、買収騒動直後に開催された株主総会では、約1500人の株主が集まりました。議長を務める日枝氏は、質疑応答の際に特定の株主を指名。一見普通の株主に見えるその人物は、実はフジテレビの経営管理局経営管理部長という幹部社員でした。「傷つかない範囲でデイトレーディングをやっています」と自己紹介したこの社員は、用意された質問を投げかける「やらせ」を行っていたのです。
2005年の株主総会の会場の様子。多くの株主が質問のために手を挙げている。
“応援株主”の実態:組織的な演出で株主の声を封殺?
内部文書によると、この株主総会にはフジテレビ社員が240名以上も出席していました。そのうち125名は「応援株主」と呼ばれ、各局の副部長から局長クラスの幹部社員で構成されていました。彼らは業務として総会に参加し、組織的に「やらせ質疑」を演出していたのです。
本来、株主総会は多様な意見が出される場であるべきです。しかし、フジテレビでは、経営にとって都合の良い質問だけを選び、批判的な意見を排除するような操作が行われていた疑いがあります。これは株主の権利を軽視するだけでなく、企業の透明性や健全性を損なう行為と言えるでしょう。
著名な企業法務専門家であるA氏(仮名)は、「このような組織的な『やらせ』は、株主総会の意義を根本から否定するものであり、看過できない問題だ」と指摘しています。B大学経営学部教授のC氏(仮名)も、「企業は株主の声に真摯に耳を傾け、透明性の高い経営を行うことが求められる。フジテレビの事例は、企業統治のあり方を見直す契機となるべきだ」と述べています。
真の企業改革に向けて:株主の声を尊重する企業文化の確立を
日枝氏の退任は、フジテレビにとって新たなスタートを切るチャンスです。過去の負の遺産を清算し、真に株主を尊重する企業文化を築き上げていくことが、今後の成長には不可欠と言えるでしょう。視聴者からの信頼を取り戻し、再び愛されるテレビ局となるために、フジテレビには抜本的な改革が求められています。