香港で「私了」が横行 中国本土留学生ら脱出





金融街セントラルの路上で、デモ隊とにらみ合う警官隊=14日、香港(共同)

 【香港=藤本欣也】香港政府や中国共産党への抗議活動が続く香港で、反政府デモを批判したり、親中派や中国本土出身者とみなされたりした人物への暴力が相次いでいる。出張中の日本人男性がデモ隊に暴行されたのもこのケースで、深まる香港社会の分断が背景にある。中国人留学生たちも香港を脱出し始めた。

 在香港の日本総領事館などによると、50代の日本人男性が11日、繁華街でデモ隊の写真を撮っていたところ、突然、若者に暴行された。この日本人は短髪で、中国人に間違えられた可能性が高い。デモ参加者は、身元を特定するためデモ隊を撮影する中国の公安関係者らを警戒している。

 同じ日、デモを批判した香港の男性(57)も市民と口論になり、何者かに油をかけられて火を付けられ、重体となった。

 また、警察の取り締まり中に建物から転落して重体に陥った男子学生(8日死亡)が通っていた香港科技大では6日、中国本土出身の留学生4人が学生から暴行を受けている。

 校長との公開討論会で、警察に抗議しない学校側を学生らが糾弾していた際、留学生たちは学校側への支持を表明したという。

 香港政府や中国当局への反発を強めるデモ参加者たちは、これらの行為を全て「私了」という広東語で表現している。本来は「問題が生じたとき、警察に通報せず自分で解決する」といった意味だ。デモが本格化してからは「私刑」に近い意味で使われている。

 民主派には「意見や立場の違いを暴力で解決しようとする『私了』には反対すべきだ」という立法会(議会)議員もいる。しかし、強硬姿勢に拍車が掛かる政府や警察への憎悪の念が募る中、デモ参加者の間で黙認されているのが現状だ。

 デモで叫ぶシュプレヒコールも、最近は「香港人よ、報復せよ!」に変わった。抗議活動を続ける若者からも、「普通選挙の実現」など民主化要求のスローガンより、香港政府や警察、中国共産党への憎悪の言葉を聞くことが多くなっている。

 12日にデモ隊と警官隊が激しく衝突した香港中文大では、中国本土出身の留学生80人以上が、香港警察の支援を受けながら大学構内を脱出し本土に戻った。立てこもりを続ける構内でこのニュースを知った女子学生(21)は「私たちの税金を使って中国人を守るなんて警察はやっぱり最低ね」と話していた。



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