〈開業は関東大震災の2年後…消えた“帝都復興の輸送路”「西武安比奈線」跡には何がある?〉 から続く
【画像】降りしきる雨、2本のレールが延びるトンネルの向こうに…消えてまだ10年も経っていない廃線「西武安比奈線」跡を写真で一気に見る
関東大震災の2年後に開業した「西武安比奈線」は、入間川の河川敷まで延びていた砂利輸送路線。帝都復興の輸送路として活躍したこの路線が正式に廃線になったのは2017年のことである。
まだ町の中に“ほぼそのまま”の形で残っているという廃線跡を訪ねることになった著者。降りしきる雨の中、関係者の案内のもと安比奈線への分岐地点だった西武新宿線「南大塚」から廃線跡に歩を進めていった――。
足元に気をつけながら進んでいく。何やらレールが見えてきた
足元に注意しながら進んでゆくと、脇に和菓子屋さんが店を構える入間川街道との交差地点。入間川街道は、いわば現在の国道16号の前身といっていい。
1960年代に整備された国道16号の上にはレールは埋め込まれていなかったが、入間川街道にはいまもレールが残る。ここもまた、きっと昔は踏切だったに違いない。
草地になっている廃線跡の空き地には、いまもレールが残っている。列車が走らなくなってから60年以上経つから、残っているレールも60年以上も前のものなのだろう。
ただ、交差する道路上では列車が走る幅のままなのに対し、草地の上のレールは2本が仲良くくっついて並んでいた。離れていたのをわざわざ移動させたのだという。草刈りなどの管理をしやすくするためだろうか。
などと思いながら草地を進んでゆくと、ぷつりと周囲の住宅地が途切れる場所に出た。周囲の風景もそれまでとはちょっと変わって、田畑が目立つ開けた地。
新河岸川などの小河川が流れていて、廃線跡は小さな橋梁や築堤でその中を一直線に進んでゆく。橋梁が残っているところは安全かどうかがわからないということで遠回り。
ごく一部だけ、田畑の中の廃線跡に沿うような道路もあって、その道路から廃線を跨ぐ板が渡されていた。
廃線跡の向こう側に暮らす民家の人が設けたのだろうか。いわば勝手踏切のようなものだが、少なくともいまでは列車が来ることは絶対にないのだから、足元不如意を除けば安全性に懸念はない。