米国の変質と中国：国際秩序の行方

混沌とする世界情勢の中、米国の変質は中国にどのような影響を与えているのでしょうか？本記事では、米中関係の現状と今後の国際秩序について、識者の見解を交えながら深く掘り下げていきます。

米国の威信低下と中国の台頭

2017年、トランプ前米大統領と習近平国家主席が会談した際の写真が象徴するように、米中関係は複雑な様相を呈しています。

2017年に訪中したトランプ米大統領と言葉を交わす習近平国家主席

トランプ前政権下におけるウクライナ問題への対応など、米国の威信低下は中国の存在感を高める結果となっています。中国大手SNSに設置された在中米国大使館の公式アカウントには、米国への失望の声が数多く寄せられています。

米国の変化は中国にとってチャンスとなる一方、リスクも孕んでいます。香港中文大学（深圳）前海国際事務研究院の鄭永年院長は、トランプ前大統領の行動は国際秩序を破壊し、米国の利益を優先した新たな秩序の構築を目指していると分析しています。

鄭院長は、トランプ前大統領の外交姿勢を「小国の犠牲をいとわない大国による強者の政治」と表現し、帝国主義時代への回帰を危惧しています。ロシアへの接近はその象徴であり、中国にとって安定こそが重要であると強調しています。

清華大学国際関係研究院の閻学通教授も、米国の変化が国際社会に及ぼす影響について懸念を示しています。米国の行動は中国にとって諸刃の剣であり、安易な行動はリスクを伴うと指摘しています。

中国経済の減速や、国内世論の対外援助への慎重な姿勢も、中国の行動を制約する要因となっています。経済圏構想「一帯一路」の縮小は、中国の現状認識を反映していると言えるでしょう。

覇権維持には莫大なコストがかかります。米国がその重荷を投げ出そうとする中、中国は慎重に次の戦略を練っています。

中国では、今後の国際情勢を古代中国の春秋戦国時代になぞらえる見方もあります。しかし、大国間の争いが激化すれば、中小国が犠牲となることは避けられません。

シンガポール建国の父、リー・クアンユー氏は、秩序なき世界では弱肉強食の論理が支配すると警告しました。ウクライナの苦境は、国際秩序の重要性を改めて示しています。

中国の議論を踏まえると、世界は「力による支配」に逆行するかの岐路に立っていると言えるでしょう。米中のはざまに位置する日本は、国際秩序の維持に積極的に貢献していく必要があります。