金正恩氏の娘キム・ジュエ氏、中国軍事パレード同行の背景と「4代世襲」の可能性 – 元統一部長官が分析

北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が中国戦勝節80周年記念軍事パレードに娘のキム・ジュエ氏(12)を同行させたことは、国際社会の注目を集めています。この動きに対し、韓国の丁世鉉(チョン・セヒョン)元統一部長官は、「後継者4代世襲の意図が明確に見える」との診断を示しました。

丁氏は、金大中(キム・デジュン)政権や盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権で統一部長官を務めた経験を持つ人物です。4日のCBS「キム・ヒョンジョンのニュースショー」に出演し、金正恩氏が2022年以降、キム・ジュエ氏を重要な公式行事の場に必ず同伴させ、将軍や技術者への指示の仕方を見せていると指摘。北朝鮮内部では、キム・ジュエ氏が金正恩氏の後継者になることを周知しているとの見解を明らかにしました。

キム・ジュエ氏の異例の公表:後継者候補の兆候

キム・ジュエ氏の公の場への早期登場は、単なる家族の同行以上の意味を持つとされています。当初「愛するお子様」と呼ばれていた呼称は、「尊敬するお子様」へと変化し、現在では「セッピョル(新星)女将軍」という特別な名称まで与えられています。これらの呼称の変化は、彼女の地位と将来の役割が内部で確立されつつあることを示唆していると丁氏は分析しました。

中国戦勝節80周年記念軍事パレードに同行する金正恩氏と娘キム・ジュエ氏の様子中国戦勝節80周年記念軍事パレードに同行する金正恩氏と娘キム・ジュエ氏の様子

金正恩委員長の個人的経験が影響か:短かった「後継者授業」

金委員長が娘ジュエ氏を早くから公開の場に登場させている背景には、自身の個人的な経験が大きく影響していると推定されています。丁氏は、金正恩氏が父である金正日(キム・ジョンイル)総書記が脳卒中で倒れた後、2009年に後継者となり、その「後継者授業」の期間がわずか2年(2011年の金総書記死去まで)しかなかった点を挙げました。この短い準備期間のため、執権初期には権力掌握に困難を伴った経験があると指摘。このため、キム・ジュエ氏には、人々を動かす方法をあらかじめ十分に教えている、というのが丁氏の説明です。

「王朝国家」北朝鮮における若年後継者の現実性

現在、キム・ジュエ氏の年齢は満12歳と推定され、韓国では中学1年生にあたる年齢です。しかし、丁氏は、この年齢であってもキム・ジュエ氏に権力が継承される可能性は十分にあると判断しています。その理由として、「北朝鮮は民主国家ではなく王朝国家である」という点を強調。世襲によって指導者が決定される国では、党幹部や軍幹部が、たとえ幼い指導者が登場したとしても、彼らをもてなす準備ができていると述べ、北朝鮮の特殊な政治体制を指摘しました。

これらの分析は、金正恩氏の行動が単なる父親の愛情表現ではなく、北朝鮮の未来を左右する重要な政治的メッセージである可能性を示唆しています。キム・ジュエ氏の今後の動向は、引き続き国際社会の注目を集めることでしょう。

参考文献