◇社会学的皇室ウォッチング!/149 これでいいのか「旧宮家養子案」―第46弾―
皇位継承を議論する衆参両院各党・会派の全体会議で驚いたのは、内閣法制局の姿勢である。旧宮家養子案への懸念を指摘する東大・京大の憲法学者の主張を一顧だにせず、「伝統」を盾に政府の進める同案を擁護していたためだ。憲法の番人としての矜持はどこへ行ったのだろうか。(一部敬称略)
3月10日の全体会議では旧宮家養子案が議論された。国会議員に憲法解釈を説明した内閣法制局第一部長・佐藤則夫は、皇位の世襲を定めた日本国憲法第2条は、「法の下の平等」を定めた第14条の例外という説明から始めた。第14条は「すべて国民は、法の下に平等」で、「人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」とする。封建的な身分制、貴族制度などは当然、禁止される。一方、第2条は、「皇位は、世襲」と定める。天皇・皇族の子は、生まれながらの皇族であり、門地(血統や家系)による差別と言い得る。しかし、憲法は、天皇制を積極的に存置した。このため、憲法学は皇室制度を平等原則の例外(飛び地)と考えるのだ。
全体会議で佐藤は、①憲法第2条が定める「世襲」の円滑運用は憲法上の要請、②したがって、一般国民である「皇統に属する者」を皇族とすることは憲法が許容――という論理を構成した。言い換えると、皇室存続という憲法秩序を維持するために、平等原則の例外的制度を新たに作ることは許されるという理屈だ。
現在、皇族女性は皇位には就けない。皇室という平等原則の「飛び地」内部のことであり、憲法学がそれを認めることについて、賛同はできないが、論理は認める。
◇恣意的な「伝統」利用 東大教授説をスルー
しかしながら、平等原則が適用される一般国民は「飛び地」にはいない。その一部が皇族に選ばれるのは別の話で、違憲の可能性が出てくる。