王子様は裸だ-。陰口をたたく街の人々を横目に、王子は笑顔で街を歩く。内心、どんな思いを抱えているのかを誰も知らずに…。作画は絵本調だが、内容は大人に染みる。「本当の強さ」とは何かを考えさせられる、読み応え十分の漫画だ。
舞台は、王の強さで各国がランク付けされる制度「王様ランキング」がある世界。主人公のボッス王国第1王子、ボッジは耳が聞こえず、口もきけない。体は小さく非力で、家臣からもバカにされている。
そんなボッジを支えるのは、「強くなりたい」という思いだ。誰に対しても心優しく、人前では常に口角を上げて笑顔を見せる。王座をめぐり裏切られ、命を狙われ、障害のため理不尽な目にあっても涙をこらえて立ち上がる。そんな姿を見た人たちは、次第に彼を支える側へと回っていく。
登場人物たちは多彩で個性豊かだ。継母のヒリングは国王の死を機に、実子の第2王子を跡継ぎにと画策する。外見も中身もいかにも意地悪そう…と思いきや、実際は母性あふれた人物で、ボッジを跡継ぎから外したのも彼女なりの思いやりだったりする。一方、有能でイケメンの従者が、結果的に最大級の“裏切り”を働くことになる。現実社会でもそうだが、人の見た目や肩書、キャラクターにとらわれてはいけないのだ。