【主張】軍事情報協定 韓国は不当な破棄撤回を


 エスパー米国防長官がソウルで韓国の文在寅大統領や鄭景斗国防相らと会談し、韓国が破棄を決めた日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の維持を求めたが、韓国側が首を縦に振ることはなかった。

 GSOMIAの失効は23日午前零時だ。維持を求める米国は、米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長やスティルウェル国務次官補らも派遣し、説得に努めてきた。

 鄭国防相は会談後の記者会見でGSOMIA維持が望ましいとの見解を示した。だが、日本が対韓輸出管理の厳格化をやめなければ、GSOMIAの破棄は見直さないという従来の立場を崩すことはなかった。文大統領も輸出管理を強化した日本とは軍事情報共有は困難との考えを伝えた。

 極めて残念な態度である。輸出管理の問題を絡めるのは筋が通らない。韓国は前提条件なしにGSOMIA維持を表明すべきだ。

 GSOMIA失効は日米韓による安全保障協力の関係を大きく後退させ、北東アジアの安保環境を悪化させる愚挙だ。エイブラムス在韓米軍司令官が12日、破棄をめぐり、「われわれがそれだけ強くないかもしれないという誤ったメッセージを送る恐れがある」と韓国に警告したのはもっともだ。

 日韓で軍事上の機密情報を共有するGSOMIAは、日米、米韓という2つの同盟を結び付けてきた。それを破棄すれば、地域の脅威である北朝鮮や中国、ロシアに対してにらみをきかせてきた日米韓の協力が後退してしまう。

 すでに、韓国が今年8月、日本に破棄を通告して以来、北朝鮮による短距離弾道ミサイル発射は拍車がかかった。非核化をめぐる米朝協議でも、米韓合同軍事演習の廃止や経済制裁解除を狙っての揺さぶりが露骨さを増している。中露両国は、9月に大規模な合同軍事演習を実施した。

 米国のボルトン前大統領補佐官は破棄の通告について、「米国が同盟諸国と連携する能力に明白な打撃を与えた」と指摘した。

 GSOMIAがなくなれば、朝鮮半島をはじめとする北東アジア地域の有事への米国の即応態勢に大きな支障が出る。米韓同盟には深刻な亀裂が生まれる。地域から米国を追い出したい中国は喜び、米韓同盟を消滅させるべく、韓国に硬軟両様の働きかけを強めるに違いない。



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