昨年12月に韓国務安国際空港で発生したチェジュ航空機のバードストライク事故。当初予定されていた着陸方向とは異なる方向への着陸を管制塔が指示していたことが、新たに公開された交信記録から明らかになりました。この事故は、航空安全における管制塔とパイロットのコミュニケーションの重要性を改めて問うものとなっています。
交信記録が明らかにする事故直前の緊迫したやりとり
事故調査の鍵を握る、事故機と管制塔間の交信記録がついに公開。ブラックボックスに記録されていない、事故直前4分7秒間の緊迫したやりとりが明らかになりました。当初、パイロットはコンクリート構造物がない1番方向(南から北)への着陸を3回にわたり管制塔に伝えていました。しかし、衝突のわずか1分前、管制官は「19番方向(北から南)で着陸するか?」と提案。パイロットはこの提案を受け入れ、着陸方向が変更されたのです。
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この19番方向にはコンクリート構造物があり、事故との関連性が疑われています。専門家からは、「管制塔とパイロットの判断の妥当性について詳細な調査が必要だ」との声が上がっています。また、憶測を避けるためにも、事故時の交信記録全体を公開すべきだという意見も出ています。
バードストライク後の混乱と着陸方向変更の謎
交信記録によると、バードストライク発生後、パイロットはゴーアラウンド(着陸復行)を試み、管制塔は高度5000フィート(約1500メートル)への上昇を指示。その後、パイロットは左旋回して当初予定の1番方向へ着陸する意思を示しました。しかし、その後の交信で、管制塔からの19番方向への着陸提案を受け入れ、最終的に事故に至ったのです。
なぜ管制塔は19番方向への着陸を提案したのか?バードストライク後の状況判断、視界の確保、風向きなど、様々な要因が考えられます。航空安全コンサルタントの田中一郎氏(仮名)は、「当時の気象条件、管制塔のレーダー情報、パイロットの経験などを総合的に分析する必要がある」と指摘しています。
情報公開の必要性と今後の調査の行方
現在、韓国国土交通部航空鉄道事故調査委員会が調査を進めていますが、最終報告書が出るまでには1年以上かかる見込みです。交信記録の一部しか公開されていない現状に、専門家からは情報公開の必要性を訴える声が上がっています。透明性の高い調査と情報公開が、事故原因の究明と再発防止策の策定に不可欠です。
今後の調査では、管制塔とパイロットのコミュニケーション、着陸方向変更の妥当性、バードストライクへの対応など、多岐にわたる視点からの検証が必要となります。この事故は、航空業界全体にとって重要な教訓となるでしょう。