臨時国会に臨む野党統一会派の追及テーマが猫の目のように変わっている。関西電力役員の金銭授受問題に始まり、辞任した2閣僚の公職選挙法違反疑惑、教育問題と変遷し、最近は首相主催の「桜を見る会」一色だ。臨機応変に手数を繰り出す戦術は一体感の醸成と継続に寄与しているようだが、世論の支持を得られるかは見通せない。(千葉倫之)
「最大のテーマは関西電力問題だ」
立憲民主党の枝野幸男代表は召集直前の10月1日、関電疑惑を論戦の柱に据える考えを示していた。また、文化庁による国際芸術祭への補助金不交付を批判し、「『報道の自由・表現の自由国会』になるかもしれない」とも予見していた。
しかし、公選法違反疑惑を報じられた2閣僚が相次ぎ辞任するや、野党の関心は安倍晋三首相の「任命責任」に。さらに、英語民間試験に絡み萩生田光一文部科学相の「身の丈」発言が飛び出すと、「教育国会の様相を呈してきた」(立民の安住淳国対委員長)と矛先を変えた。
一時、国民民主党の森裕子参院議員の質問通告「漏(ろう)洩(えい)」問題にも色気を見せたが、森氏らの官僚や民間人を恫(どう)喝(かつ)するような振る舞いに注目が集まるとトーンダウン。今は「桜を見る会が首相に私物化された」などと批判しており、関電などは幹部の口の端にものぼらなくなった。
臨機応変に攻撃材料を変える戦術は、国会対策を熟知した安住氏の手腕だとの評価がもっぱらだ。枝野氏は周囲に「相談しなくても自分でうまく回してくれるのでありがたい」と語る。実際、英語民間試験を導入延期に追い込むなど一定の成果は出ている。
ただ、一連の攻勢は週刊誌報道や共産党の調査に便乗した結果であり、最大の案件である日米貿易協定の審議では政府を攻めあぐねている。与党の国対幹部は「焦点が定まらない。どれも不発だ」と冷ややかに語り、野党統一会派内からは「支持率アップにつながるのか」(関係者)と懐疑的な声も聞こえる。