入学シーズン、希望に胸を膨らませる新入生たち。しかし、その裏で一部の学校では、過酷な「通過儀礼」が存在する。本記事では、2020年に岩手県立水沢高校に入学したBくんが、勇気を持って学校と向き合い、応援歌練習のあり方を変えた実話を紹介します。
応援歌練習の実態:恐怖と怒りの入学式後
入学式後、Bくんを待ち受けていたのは、バンカラ風の制服を着た応援団による威圧的な応援歌練習でした。太鼓の音と怒号が響き渡る教室で、机がひっくり返され、泣き出す生徒も。Bくんは怒りを覚えながらも、上級生相手に声を上げることはできませんでした。当時の状況をBくんの父親は次のように語っています。
「応援歌練習は入学式後、約2週間続きました。登下校時には校門に応援団が立ち、挨拶を強要。練習中は罵声を浴びせられ、廊下を走らされることも日常茶飯事でした。Bはこの雰囲気を嫌がっていました。」
水沢高校の応援練習の様子
生徒の勇気:校長との対峙と改革への第一歩
恐怖と怒りを抱えたBくんは、父親に電話で相談。父親のサポートを受け、校長との話し合いの場が設けられました。Bくんは、机をひっくり返された女子生徒の気持ちを考え、黒板を叩く行為はパワハラに当たると主張。社会では許されない行為が教育現場で行われている現状を厳しく指摘しました。
校長は「怖いと思うなら出なくて良い」と返答。Bくんはそれ以降、応援歌練習をボイコットしました。
約束の反故と再燃する闘志:生徒と保護者の連携
Bくんは校長から、翌年以降は威圧的な応援歌指導をやめる約束を取り付けていました。しかし、翌年の入学式、その約束は破られていました。再び怒鳴り声と走る新入生の姿を見たBくんは、父親に助けを求めました。
父親は再び学校と交渉。応援団担当顧問は話し合いを拒否しようとしましたが、Bくんと父親は粘り強く説明を求めました。前回の約束を反故にされたことに憤りを感じた父親も、学校側に強く抗議しました。
水沢高校の改革:生徒の声が変えた未来
Bくんと父親の粘り強い訴え、そしてメディアの注目も後押しとなり、水沢高校は2021年度を最後に威圧的な応援歌指導を廃止。現在も応援歌練習は行われているものの、雰囲気は大きく変わったと学校側は説明しています。
水沢高校の教頭は、「現在では、応援団の指導のもと大きな声で歌いましょうとはなっています。過去には厳しい応援歌練習はありました。しかし厳しい練習はパワハラという認識ですので、もうなくなっています。今は、厳しい応援歌練習はしていません」とコメントしています。
Bくんの勇気ある行動は、学校文化を変革する大きな力となりました。教育現場における生徒の声の重要性を改めて示す事例と言えるでしょう。
変化への期待:教育現場の未来
この出来事は、学校における伝統や慣習を見直すきっかけとなりました。生徒の声に耳を傾け、より良い教育環境を築くためには、学校、保護者、生徒が一体となって取り組むことが不可欠です。今後の教育現場の更なる変化に期待が寄せられています。