関西地方在住の久保田悦子さん(仮名・67歳)は、薬剤師として働きながら、1万人に1〜2人しか発症しない難病「進行性核上性麻痺」を患う夫と、寝たきりになった高齢の母のダブル介護を経験しました。想像を絶する困難の中、彼女はどのように乗り越え、そして家族の絆を深めていったのでしょうか。この記事では、久保田さんの壮絶な体験と、そこから得られた希望の光をご紹介します。
難病と骨折、ダブル介護の始まり
久保田さんの夫は60代で進行性核上性麻痺を発症。めまいや転倒を繰り返すようになり、徐々に日常生活に支障が出るようになりました。そんな中、80代の母親が転倒し左腕を複雑骨折。手術も困難な状況で、寝たきりになってしまいます。
母親の介護とゴミ屋敷の片付け
寝たきりになった母親の介護は、実家の隣に住む妹が担うことになりました。久保田さんも週に2回ほど実家を訪れ、介護ベッドを設置するためにゴミ屋敷と化した実家の片付けを手伝います。長年放置された不要品で溢れかえり、足の踏み場もない状態でした。
介護ベッドを入れるために片付けるゴミ屋敷
母親の涙と家族の絆
ある日、片付け中に隣の部屋から母親の泣き声が聞こえてきました。「世話かけてごめん」と繰り返す母親の姿に、久保田さんも思わず涙が溢れます。「親子なんだから、心配しなくていい」と母親を抱きしめる久保田さん。この出来事をきっかけに、家族の絆はさらに深まっていきました。
コロナ禍での介護の難しさ
コロナ禍ということもあり、デイサービスの利用も難しく、介護の負担はさらに増していきました。夫の介助もある久保田さんは長時間家を空けることができず、心身ともに疲弊していく日々。それでも、家族のために懸命に介護を続けました。
専門家の声
高齢者介護の専門家である山田先生(仮名)は、「ダブル介護は肉体的にも精神的にも大きな負担がかかります。家族だけで抱え込まず、行政や地域包括支援センターなどのサポートを活用することが大切です」と述べています。
ダブル介護を通して深まった夫婦の絆
過酷なダブル介護の日々の中で、久保田さんと夫の関係は意外な変化を見せます。病気が進行するにつれ、夫は子供のように素直になり、久保田さんに甘えるようになったのです。以前はあまり会話がなかった二人ですが、今では冗談を言い合ったり、手をつないで散歩したりするなど、まるで新婚夫婦のような時間を過ごしています。
介護の喜びと希望
久保田さんは、「介護は大変ですが、喜びもあります。夫と母の笑顔を見ると、頑張ってよかったと思えます」と語ります。困難な状況の中でも、前向きな気持ちを持ち続け、家族の絆を大切にする久保田さんの姿は、多くの介護者の心に希望を与えることでしょう。
まとめ:ダブル介護を乗り越えて
久保田さんの体験は、ダブル介護の過酷さを物語ると同時に、家族の絆の大切さを教えてくれます。困難な状況でも、支え合い、励まし合うことで、希望を見出すことができるのです。この記事が、同じように介護に奮闘している方々の力になれば幸いです。