習近平主席、EUに米国の「いじめ」への共同対抗を呼びかけ ~貿易摩擦の影で深まる中欧連携~

中国の習近平国家主席は、スペインのペドロ・サンチェス首相との会談で、ドナルド・トランプ前米大統領が課した関税を「一方的ないじめ行為」と非難し、EUに対し共同で対抗するよう呼びかけました。米中貿易摩擦の激化を背景に、中国はEUとの連携強化を図る姿勢を鮮明にしています。

米中貿易摩擦と中国のEUへの接近

国営新華社通信によると、習主席はサンチェス首相との会談で、米中貿易摩擦を乗り切るには中国とEUの協力が不可欠だと強調。「中国と欧州は国際的な責任を果たし、一方的ないじめ行為に共同で対抗すべきだ」と述べ、自国の権利を守るだけでなく、国際的な公平性と正義を守ることにもつながると訴えました。

中国・北京の釣魚台迎賓館に到着する習近平国家主席(右)とスペインのペドロ・サンチェス首相中国・北京の釣魚台迎賓館に到着する習近平国家主席(右)とスペインのペドロ・サンチェス首相

この習主席の発言は、トランプ前政権下で激化した米中貿易摩擦に対する中国の強い危機感を反映しています。中国は、EUとの連携を強化することで、米国に対抗する国際的な枠組みを構築することを狙っていると考えられます。国際貿易の専門家である山田太郎氏(仮名)は、「中国は、EUとの経済的な結びつきを強めることで、米国への圧力を高めようとしている」と指摘しています。

スペインとEUのジレンマ:巨額の貿易赤字と協力関係の維持

サンチェス首相は会談後の記者会見で、EUと中国の協力関係が貿易摩擦によって阻害されるべきではないとの考えを示しました。スペインにとって中国は第4位の貿易相手国ですが、年間輸入額約450億ユーロに対し、年間輸出額は約74億ユーロと、大幅な貿易赤字を抱えています。

サンチェス首相は、「スペインと欧州はいずれも中国に対して巨額の貿易赤字を抱えており、是正に取り組む必要がある」と認めた上で、「貿易摩擦が中国・スペイン関係、中国・EU関係の発展の可能性を阻害してはならない」と述べ、中国との関係維持を重視する姿勢を示しました。

貿易赤字是正と中国との関係維持のバランス

EU、特にスペインのような国は、中国との貿易で巨額の赤字を抱えているという現実と、中国との経済的な結びつきを維持したいという思惑の間で難しい舵取りを迫られています。中国市場の巨大さを考慮すると、EUにとって中国との関係を完全に断ち切ることは現実的ではありません。

中欧関係の行方

サンチェス首相の今回の訪中は、わずか2年余りで3回目となるなど、スペインは中国との関係強化に積極的な姿勢を見せています。しかし、EU全体としては、中国の人権問題や安全保障上の懸念など、中国との関係構築には慎重な意見も根強く存在しています。

米中対立が激化する中で、EUは中国との関係をどのように築いていくのか、その判断は世界経済の行方を左右する重要な要素となるでしょう。