今年のカンヌ国際映画祭で、韓国映画が主要部門から姿を消しました。2013年以来、実に12年ぶりの出来事です。一方で、日本映画はコンペティション部門をはじめ、3作品が主要部門にノミネートされる快挙を成し遂げました。この明暗を分けた背景には何があるのでしょうか?
韓国映画、栄光の影に潜む課題
韓国映画界はこの結果に衝撃を受けているものの、「当然の結果」と受け止める声も少なくありません。専門家の多くは、長年積み重ねてきた課題が顕在化したと指摘します。象徴的なのが、韓国映画界を牽引してきたCJ ENMの苦境です。『パラサイト 半地下の家族』や『別れる決心』といった世界的なヒット作を送り出してきた同社ですが、今年はカンヌへの出品作がないばかりか、海外バイヤー向けのブース設置も見送る事態となりました。「売る映画がない」というのがその理由です。
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韓国映画界の停滞は、日本映画の躍進と対照的であり、その落差をより際立たせています。例えば、コンペティション部門にノミネートされた『ルノワール』の早川千絵監督は、昨年『PLAN 75』で韓国でも話題となりました。ミッドナイト・スクリーニング部門の『8番出口』は、『すずめの戸締まり』のプロデューサーとして知られる川村元気監督の作品です。「ある視点」部門には、『ある男』で韓国でも高い評価を得た石川慶監督の『遠い山なみの光』が選出されました。
日本映画躍進の鍵:40代監督の層の厚さ
注目すべきは、これらの監督が全員40代であるという点です。「ポスト・ポン・ジュノ」「ポスト・パク・チャヌク」の不在が嘆かれる韓国映画界とは対照的に、日本映画界では中堅世代の監督たちが着実に力をつけてきています。映画評論家の加藤美穂氏(仮名)は、「日本映画界では、40代の監督たちが多様なジャンルに挑戦し、国際的な評価を高めている。これは、長年の育成システムと、才能ある監督への継続的な投資の成果と言えるだろう」と分析しています。
日本映画の多様性と国際性
日本映画の躍進は、多様なジャンルと国際的な視点にも支えられています。アニメーション、ホラー、ヒューマンドラマなど、幅広いジャンルの作品が世界中の観客を魅了しています。また、海外の映画祭での受賞や、国際共同制作の増加も、日本映画のプレゼンスを高める要因となっています。
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韓国映画、未来への展望
韓国映画界は、今回のカンヌの結果を真摯に受け止め、今後の戦略を練り直す必要があるでしょう。才能ある若手監督の育成、多様なジャンルの開拓、国際的なネットワークの構築など、様々な取り組みが求められます。映画プロデューサーの李勇洙氏(仮名)は、「韓国映画には、優れたストーリーテリングの力と、高い技術力がある。これらの強みを活かし、新たな挑戦を続けることで、再び世界を舞台に活躍できるはずだ」と期待を寄せています。
今回のカンヌ映画祭は、韓国映画と日本映画の現状を浮き彫りにしました。韓国映画界は、この苦境を乗り越え、新たな輝きを取り戻すことができるでしょうか。今後の動向に注目が集まります。