立憲民主党の枝野幸男元代表が消費税減税派を「ポピュリズム」と断じ、分党を勧告した発言に15日、党内の有力者らから反発が相次いだ。源流の民主党も消費税を巡る抗争から分裂し、政権を失った。枝野氏としては衆院選で減税を掲げて議席を減らした自身の反省を踏まえた言動だったが、中堅などからも党創設者の「分党発言」を疑問視する意見が出ている。
■分裂最も恐れる野田代表
波紋の発端は12日、枝野氏がさいたま市内で行った講演だ。党内の減税派に対し、「減税ポピュリズムに走りたいなら別の党をつくるべきだ」と発言した。
言うまでもなく党分裂に発展するのを最も恐れているのは野田佳彦代表に他ならない。野田氏は15日、記者団に「私は今の党内議論をポピュリズムとは思わない。物価高の問題を踏まえ、真剣な議論をしてもらっている」と述べた。
首相時代に現在の消費税率10%に道筋をつけた野田氏だが、民主党の実力者だった小沢一郎衆院議員と激しく対立、党は分裂した。現在の立憲民主でも消費税を巡って「分党」に言及するのは禁句といえる。
野田氏は分裂を懸念してか、「活発な意見交換をして、一定の時期が来たら集約する。結論が出たら従う政治文化をつくるのが私の役割だ」と語った。小川淳也幹事長も記者会見で「枝野氏は党の創業者だ」としつつ、「異なる意見に耳を傾けられるかが、党の懐の深さを体現することにつながる」と述べた。
■代表復活の芽なくなった
一方、小沢氏は15日、自身のグループの会合後、枝野氏の発言について「非常に傲慢な印象を与える。俺は『剛腕』とはいわれたけど『傲慢』というのはあまりいわれたことないな」と記者団に語った。与野党が消費税減税を訴えていると指摘し、「立民だけが『減税をしない』というようなことで、この党の存立が図れるか」と主張した。
さらに江田憲司元代表代行も同日、自身が会長を務め、消費税減税を掲げるグループの会合で「政策論議、政策提言、言論の自由を封殺しようというのは、看過できない大変遺憾な発言だ」と非難した。
もっとも枝野氏はどこ吹く風だ。周囲には「減税にぶれたら支えないということを野田氏に突き付けている。『本気だ』ということだ」と漏らす。
立民中堅は「分党発言で枝野氏の代表復活の芽はなくなった。党内を包摂できないのだから支持されないだろう」と批判した。(深津響)