日本の経済停滞、いわゆる「失われた30年」からの脱却は、長年の課題となっています。一体何が停滞を招き、どうすれば打破できるのでしょうか? 本記事では、リチャード・カッツ氏の著書『「失われた30年」に誰がした──日本経済の分岐点』(早川書房)を参考に、日本経済復活の鍵となる「ガゼル企業」育成の重要性について解説します。
衰退する日本経済:低成長とガゼル企業の不在
かつて高度経済成長を遂げた日本は、企業の新陳代謝が活発で、創業率12%、廃業率5%という好循環を生み出していました。しかし近年、その数値は先進国中最下位レベルにまで落ち込み、経済成長も鈍化しています。GDP成長率は高度成長期の年平均9%から、過去30年では平均0.7%にまで低下。一人当たりGDPも韓国に追い抜かれるなど、厳しい現実が突きつけられています。
衰退する日本経済
ガゼル企業:経済活性化の起爆剤
経済成長の鍵を握るのが「ガゼル企業」と呼ばれる、創業から5年未満で急成長を遂げる企業です。ガゼル企業は、雇用創出、イノベーション、生産性向上に大きく貢献します。アメリカでは、ガゼル企業が全体の2%に過ぎないにも関わらず、国全体の実質的な雇用創出の3分の1以上を担ったというデータもあります。
日本におけるガゼル企業の現状
先進国では一般的に企業全体の4~6%を占めるガゼル企業ですが、日本ではその統計すら定期的に取られていません。存在感が希薄なことは明白です。
ガゼル企業
日本に必要なのはガゼル企業の「成長」支援
カッツ氏は、日本の問題は新しい企業の「設立」よりも「成長」にあると指摘します。創業から3年生き残り、成長を続け雇用拡大に貢献する企業の割合はOECD加盟国中最下位です。つまり、日本はガゼル企業を育てられていないのです。
伝統産業こそガゼル化のチャンス
注目すべきは、ガゼル企業はハイテク企業だけではないという点です。アメリカの生産性革命では、伝統的な産業におけるテクノロジー活用が大きな役割を果たしました。日本でも同様のことが言えます。既存の産業に新たな技術やビジネスモデルを導入することで、ガゼル企業を生み出す可能性は十分にあります。例えば、中小企業診断士の山田太郎氏(仮名)は、「日本の伝統工芸に最新のIT技術を融合させることで、新たな市場開拓や生産性向上が期待できる」と述べています。
まとめ:未来への展望
日本経済の復活には、ガゼル企業の育成が不可欠です。政府や金融機関は、ガゼル企業への支援を強化し、成長を促す環境整備に取り組む必要があります。また、企業自身もイノベーションを追求し、新たなビジネスモデルを創造していくことが求められます。ガゼル企業の育成こそが、日本経済の未来を切り開く鍵となるでしょう。