東京都の公立学校で働くスクールカウンセラー(SC)が、5年の任期上限を理由に大量雇い止めされた問題が波紋を広げています。jp24h.comでは、この問題の背景や今後の展望について詳しく解説します。
会計年度任用職員制度とは? 経験豊富なSCがなぜ雇い止め?
2020年4月の地方公務員法改正により、多くのSCが非正規雇用の「会計年度任用職員」となりました。この制度では、任期が最長5年と定められており、更新を希望する場合は公募手続きへの参加が必須です。東京都では2023年度末時点で約1700人のSCが勤務しており、そのうち1096人が5年目の公募に応募しましたが、約4分の1にあたる250人が不合格となり、大量雇い止めが発生しました。
スクールカウンセラー励ます会の様子
この雇い止め問題に対して、東京公務公共一般労働組合心理職一般支部(心理職ユニオン)は、都教育委員会との交渉や折衝を重ねてきました。しかし、都側の回答は「会計年度任用職員制度に基づいている」という一点張りで、これまでの業績評価は一切考慮されていないとのことです。心理職ユニオンの原田仁希さんは、この状況を深刻に受け止め、雇い止めされたSC約80人からの労働相談を受けています。
訴訟の行方とSCの未来
雇い止めされたSC10人は、都に対し職員としての地位確認と損害賠償を求める訴訟を起こしました。原告弁護団長の平和元弁護士は、「5年という上限に法的根拠がない」と指摘し、過去の類似事例として、非常勤保育士の大量解雇をめぐり争われた中野区立保育園事件を挙げています。
笹山尚人弁護士は、民間の有期雇用労働者には雇い止めに関する法規制がある一方、公務員には同様の法理が存在しないという現状を問題視しています。
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立教大学コミュニティ福祉学部特任教授の上林陽治さんは、名古屋市で発生した保育士の大量雇い止め問題など、同様の事例が全国的に発生していることを指摘。一方で、国が期間業務職員の「3年公募制」を廃止した動きや、会計年度任用職員の公募を廃止する自治体が増えている現状を紹介しました。
専門性と信頼関係を重視した制度設計を
SCは、児童生徒の心のケアを担う重要な役割を担っています。教員や保護者との信頼関係も不可欠です。1年単位の短期雇用では、専門性を高めることや安定した関係構築が難しく、質の高い教育の提供に支障をきたす可能性があります。SCの専門性と子どもたちの未来を守るためにも、より安定した雇用制度の確立が求められています。