ハンガリー、LGBTQ抑圧を憲法に明記 揺らぐオルバン政権の焦りか

ハンガリーで、LGBTQをはじめとする性的少数者への抑圧を強化する憲法改正案が可決されました。性別は男女のみと規定し、性的少数者の集会を政府が制限できるという内容です。この動きは国際社会から強い批判を浴びており、国内でもオルバン首相の強権的な政治手法への反発が高まっています。本記事では、この憲法改正の背景や今後の影響について詳しく解説します。

伝統的家族観を盾に、揺らぐ支持基盤

オルバン首相率いるフィデス・ハンガリー市民連盟は、長年にわたり保守層からの支持を基盤に政権を維持してきました。近年、その支持基盤に陰りが見え始める中、オルバン政権は伝統的な家族観を強調することで支持の回復を図ろうとしていると見られます。性的少数者への抑圧強化は、この戦略の一環と言えるでしょう。

altハンガリーのオルバン首相altハンガリーのオルバン首相

エスカレートする性的少数者への弾圧

ハンガリーでは、2020年に誕生時の性別からの変更を禁止する法律、2021年には18歳未満向けの広告等で同性愛の描写を禁止する法律が制定されました。さらに今年3月には、レインボーフラッグの掲揚や性別と異なる服装での集会参加を禁止する法律が成立。そして今回の憲法改正案へと繋がり、性的少数者への弾圧はエスカレートしています。

監視強化による自由の侵害

今回の憲法改正案で特に懸念されているのが、集会の監視のために当局が顔認証機能付き監視カメラを使用できるという点です。ハンガリー市民自由連合のアダム・レンポート氏(仮名)は、この措置によって人々が政治的な意見表明を控えるようになり、表現の自由が侵害される可能性を指摘しています。ハンガリー憲法裁判所の元判事であるアンドラーシュ・シャーヨ氏(仮名)も、プライバシーの侵害と権力の濫用につながる危険性を警告しています。

高まる国内外の批判と新たな保守勢力の台頭

今回の憲法改正案は、野党や人権団体から強い反発を受けています。国会議事堂の封鎖を試みる抗議活動も発生し、国内の緊張が高まっています。国際社会からも非難の声が上がっており、EUはハンガリー政府に対し、人権の尊重を求める声明を発表しています。

さらに、オルバン政権にとって新たな脅威となっているのが、新興保守政党「ティサ(尊重と自由)」の台頭です。ティサはオルバン政権の汚職体質などを批判し、支持を拡大しています。最近の世論調査では、ティサの支持率がフィデスを上回る結果も出ており、オルバン首相の焦りは募っていると考えられます。

オルバン政権の今後

オルバン政権は、支持率低下と新たな保守勢力の台頭という厳しい状況に直面しています。性的少数者への抑圧強化は、支持基盤の結束を図るための苦肉の策と言えるでしょう。しかし、国内外の批判の高まりは、政権の安定を揺るがす可能性があります。今後のオルバン政権の動向に注目が集まります。