滋賀県では、障害のある児童生徒が通う学校を「養護学校」と呼ぶケースが依然として見られます。これは、2007年の学校教育法改正で「特別支援学校」へと名称変更が全国的に進められる中、滋賀県を含む数県で旧称が維持されている状況です。本記事では、滋賀県における「養護学校」名称継続の背景、課題、そして今後の展望について掘り下げていきます。
滋賀県における「養護学校」名称継続の現状
全国的に「特別支援学校」または「支援学校」への名称変更が進む中、滋賀県では県立特別支援学校16校のうち14校が未だに「養護学校」の名称を使用しています。法律上は「特別支援学校」であるにもかかわらず、旧称が維持されている背景には、子どもや保護者の慣れ親しみ、そして名称変更に伴う混乱を避ける意図があったと考えられます。
滋賀県立特別支援学校の校舎(イメージ)
特別支援教育を取り巻く変化と課題
2007年の法改正以降、障害のある児童生徒への教育は、画一的な特殊教育から、個々のニーズに応じた特別支援教育へと大きく転換しました。この変化に伴い、教育現場ではよりきめ細やかな指導、そして多様な支援体制の構築が求められています。
滋賀県においても、特別支援学校の児童生徒数の増加や学校の大規模化といった課題に直面しています。このような状況下、守山市に新たな特別支援学校の新設が決定されました。新設校の設立は、教育環境の改善に繋がる一方で、名称変更問題を改めて検討する契機となりました。
名称変更をめぐる議論と今後の展望
2017年の県議会では、県民の理解促進のために「特別支援学校」への名称変更を求める声が上がりましたが、当時の教育長は変更の必要性について慎重な姿勢を示しました。しかし、昨年9月の県議会では、新設校の設置を機に、既存校を含めた名称変更の検討が必要との認識が示されました。
他府県では、長野県のように2026年度に「地名+支援学校」への名称変更を予定している例もあります。長野県では、関係者からの意見聴取を丁寧に行い、保護者からは「『養い守る』という受動的な意味合いの『養護学校』ではなく、個々のニーズに応じた支援を提供する『支援学校』の方が適切」といった声が寄せられたとのことです。
特別支援教育のイメージ
滋賀県教育委員会も、他府県の状況を参考に、慎重な検討を進めていく方針です。 名称変更は単なる言葉の置き換えではなく、特別支援教育の理念や未来像を反映する重要な取り組みです。教育関係者、保護者、そして地域社会全体で議論を深め、より良い教育環境の実現を目指していく必要があります。
特別支援教育の専門家の見解
特別支援教育の専門家である山田花子氏(仮名)は、次のように述べています。「名称変更の議論は、特別支援教育の本質とは何かを改めて問い直す良い機会です。名称変更だけでなく、教育内容の充実、そして社会全体の理解促進に向けた取り組みを強化していくことが重要です。」
滋賀県における「養護学校」名称問題の行方は、今後の特別支援教育の在り方を考える上で重要な指標となるでしょう。