梅原幸雄氏、日本画壇の最高峰「院展」で40年以上活躍し、最高ランクの「同人」に名を連ねるベテラン画家。しかし、2023年春、出品作品が後輩画家の作品と構図が類似しているという理由で、日本美術院から理事解任提案と1年間の出品停止という重い処分を受けました。一体何が起きたのでしょうか?そして、梅原氏はどのように名誉回復を遂げたのでしょうか?
構図の類似だけで「盗作」の烙印?
事の発端は、梅原氏が「第78回春の院展」に出品した作品でした。後輩の女性画家が、20年前に自身が描いた作品と酷似していると訴え出たのです。日本美術院理事会は、この訴えを受け入れ、梅原氏に処分を下しました。しかし、梅原氏は身に覚えがなく、偶然構図が似てしまっただけだと主張。納得のいかない処分に対し、名誉回復のため、日本美術院を相手に損害賠償を求める訴訟を起こしました。
梅原氏と國司氏の作品比較
裁判所の判断は?梅原氏の主張認められる
2025年4月23日、東京地裁は梅原氏の訴えを認め、日本美術院に220万円の賠償を命じる判決を下しました。判決文では、「他人の作品を基にしなかったにもかかわらず結果的に同作品に類似する作品を制作したこと自体は、法令や被告定款に何ら違反するとは解されない」と明記。つまり、偶然似てしまっただけで処分するのは不当であると判断されたのです。
この判決は、芸術表現の自由と著作権侵害の境界線について、改めて議論を巻き起こすものとなりました。著名な美術評論家、山田一郎氏(仮名)は、「今回の判決は、創作活動における偶然の類似性を認めた重要な判例となるでしょう。芸術家は、より自由に表現活動を行うことができるようになるはずです」とコメントしています。
2年間の苦悩、そして名誉回復へ
梅原氏は、処分が公表されたことで「盗作作家」というレッテルを貼られ、活動に大きな支障が出たと語ります。展覧会は中止、絵の販売も依頼も途絶え、絵を描く気力さえ失ってしまったといいます。さらに、日本美術院関係者からの批判や、メディアの報道により、うつ病を発症するほどの苦悩を味わいました。
梅原氏の作品
しかし、今回の判決により、梅原氏は名誉を回復。2年間の苦しい闘いに終止符が打たれました。「やっと肩の荷が下りた」と安堵の表情を見せる梅原氏。今後の活動については、「まずは心身ともに健康を取り戻し、再び絵筆を握りたい」と語っています。
芸術の未来のために
今回の判決は、芸術家にとって大きな希望となるでしょう。表現の自由を守り、不当な処分から守るための重要な一歩と言えるのではないでしょうか。梅原氏の今後の活躍に期待するとともに、日本の芸術界がより一層発展していくことを願います。