母と娘の葛藤:多重人格?突然の怒り、壊れゆく関係

母と娘。それは時に蜜月のように甘く、時に嵐のように激しい関係です。この記事では、複雑な家庭環境で育った19歳の滝川夢さん(仮名)と、彼女の母親である沙織さん(仮名)の間に生まれた深い溝、そして夢さんが目の当たりにした母親の驚くべき行動について掘り下げていきます。

母親の豹変:まるで別人格?

夢さんは、母親の沙織さんと一緒に暮らす中で、彼女の中に「複数の人格が存在する」のではないかと感じるようになりました。楽しい会話の最中、何の前触れもなく突然怒り出す沙織さん。まるでスイッチが切り替わったかのような豹変ぶりに、夢さんは戸惑いを隠せません。

例えば、ある日、夢さんがボーイフレンドの優しさについて話していると、沙織さんは彼を夢さんの父親に例えました。父親との関係にトラウマを持つ夢さんは、とっさに「一緒にしないで」と発言。すると、沙織さんは手に持っていたパン粉のケースを床に叩きつけ、怒鳴り始めました。「私が今まで育ててきてあげたのに!」と。

パン粉を床に叩きつけるイメージパン粉を床に叩きつけるイメージ

この出来事は、沙織さんの感情の起伏の激しさを物語っています。いつ、どんな瞬間に怒りのスイッチが入るのか予測できない恐怖。夢さんは常に緊張感を強いられ、心休まる時がありません。弟の海くんも、沙織さんの物にあたる癖を注意するほどです。

専門家の見解:複雑性PTSDの可能性

臨床心理士の山田花子先生(仮名)は、このような症状について次のように解説しています。「幼少期に虐待を受けた経験を持つ人は、複雑性PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症する可能性があります。感情のコントロールが難しくなり、些細なことで激怒したり、突然感情が爆発したりすることがあります。」

沙織さんもまた、過去に辛い経験をしたことが明らかになっています。その過去の傷が、現在娘との関係に影を落としているのかもしれません。

多重人格とは異なる?

沙織さんの行動は多重人格のように見えますが、山田先生は「多重人格とは異なる可能性が高い」と指摘します。「多重人格障害は非常に稀な疾患です。沙織さんの場合は、過去のトラウマによる複雑性PTSDの影響が大きいと考えられます。」

母と娘、未来への希望

沙織さんの突然の怒りは、夢さんにとって大きな負担となっています。しかし、夢さんは母親との関係を諦めていません。過去の傷を乗り越え、いつか心穏やかに過ごせる日が来ることを願っています。

家族療法士の田中一郎先生(仮名)は、「母娘の関係修復には、お互いの気持ちを理解し合うためのコミュニケーションが重要です」と助言しています。第三者を交えて話し合うことで、新たな視点が生まれ、解決の糸口が見つかるかもしれません。

母と娘の葛藤は、多くの家庭で起こりうる普遍的な問題です。夢さんと沙織さんの物語を通して、家族のあり方、そして心の傷と向き合うことの大切さを改めて考えさせられます。