統合失調症:遺伝か環境か?デンマーク養子研究が解き明かす驚きの真実

統合失調症の発症原因は、長年の謎でした。「遺伝」か「環境」か、様々な議論が交わされてきました。この記事では、デンマークで行われた画期的な養子研究を通して、その謎に迫ります。ジェネイン四姉妹の事例や、当時の精神医学界の動向も交えながら、統合失調症の真実に迫る旅にご一緒しましょう。

ジェネイン四姉妹と統合失調症研究の幕開け

アメリカで生まれたジェネイン四姉妹は、20代前半という若さで全員が統合失調症を発症しました。この衝撃的な事実は、研究者デビッド・ローゼンタール氏の目に留まり、統合失調症の原因究明のための重要な研究が始まりました。ローゼンタール氏は、遺伝と環境の両方が統合失調症の発症に影響を与えているのではないかと考え、研究を進めていきました。

ジェネイン四姉妹のイメージ写真ジェネイン四姉妹のイメージ写真

1967年:精神医学界を揺るがした学術サミット

1960年代、最初の精神病治療薬であるソラジンの登場は、統合失調症研究に大きな影響を与えました。遺伝を重視する研究者にとっては、薬の効果は統合失調症の生物学的基盤を示唆するものと捉えられました。一方、環境要因を重視するセラピストたちは、薬は症状を抑えるだけで根本的な解決にはならないと考え、無意識の衝動の探求を続けました。

こうした対立を解消すべく、1967年に学術サミットが開催されました。ローゼンタール氏も参加し、自らの研究成果を発表する機会を得ました。

デンマーク養子研究:遺伝か環境か?

ローゼンタール氏とシーモア・ケティ氏は、研究対象としてデンマークを選びました。デンマークは詳細な医療記録が整備されており、研究への協力も得やすかったためです。彼らは、養子縁組後に統合失調症を発症した人々の記録を調査し、育ての親の健康状態との関連性を調べました。

さらに、実の親の健康状態も調査し、遺伝的要因の影響を分析しました。そして、これらのデータを、実の親の元で育った統合失調症患者と比較することで、遺伝と環境のどちらがより影響力を持っているのかを検証しました。

驚きの研究結果:遺伝的素因の重要性

研究結果は驚くべきものでした。統合失調症の発症は、育ての親の健康状態とはほとんど関連がなく、実の親、つまり遺伝的要因と強い相関関係を示したのです。統合失調症の家族歴を持つ人は、そうでない人に比べて、子どもが統合失調症を発症する確率が4倍も高かったのです。

統合失調症の遺伝的要因のイメージ統合失調症の遺伝的要因のイメージ

この結果は、統合失調症が必ずしも親から子へ直接遺伝するわけではないものの、遺伝的素因が大きく影響していることを示唆しています。つまり、「どこで育ったか」「誰に育てられたか」よりも、「どんな遺伝子を受け継いだか」が重要である可能性が高いということです。

結論:統合失調症研究の新たな一歩

デンマークの養子研究は、統合失調症の原因解明に大きく貢献しました。遺伝的素因の重要性が明らかになったことで、今後の研究は、具体的な遺伝子の特定や、遺伝子と環境の相互作用の解明へと進んでいくでしょう。統合失調症という複雑な病の全貌解明に向けて、研究はこれからも続いていきます。