定年や早期退職が視野に入ってくる50代。長年勤めた会社を離れるにあたり、その後の生活設計に大きな不安を抱える方は少なくありません。懸命に働き、自分の将来について考える余裕がなかったという人も多いでしょう。
多くの人が「50代での転職は難しい」「給料は下がるもの」と考えがちですが、実はデータを見ると意外な現実が見えてきます。エン・ジャパン運営の「ミドルの転職」の調査では、50代で転職した人の42%が「給与がアップした」と回答しています。厚生労働省のデータでも、正社員として転職した50代の約3割が収入増を実現しています。
これは、かつての転職市場のイメージとは大きく異なる状況です。では、なぜ50代からの転職で給料アップが可能なのでしょうか?そして、成功者はどのような方法をとっているのでしょうか?
50代転職に立ちはだかる壁:履歴書と「使える資格」の悩み
多くの50代転職希望者が最初に直面するのが、書類選考の壁です。長年の経験やスキルがあると思っていても、応募してもなかなか面接に進めないというケースは少なくありません。これは、履歴書を見た採用担当者が「目立つもの」を見つけにくいと感じるためかもしれません。
資格取得も有効な手段と考えられますが、50歳を過ぎてからの新しい学習は、記憶力や体力、モチベーションの維持といった点でハードルが高く感じられがちです。「どうせ取得するなら、絶対に使える、食いっぱぐれない資格が欲しい」と考えているうちに、結局何も行動できないまま時間が過ぎてしまうという声もよく聞かれます。若かった頃とは違い、リカレント教育が一般的ではなかった世代にとっては、特に資格取得への一歩が重く感じられる可能性があります。
50代での転職活動、将来への不安を抱えながら進める人のイメージ。
データが示す現実:50代転職者の4割が給与増
前述の通り、エン・ジャパンや厚生労働省のデータは、50代の転職者でも給与アップが十分に可能であることを示しています。特に注目すべきは、厚生労働省の雇用動向調査(2023年)で、転職後に賃金が上昇した人の割合の増加幅が、全世代の中で50代後半の女性で最大だったという点です。
これは、近年の企業における女性活躍推進の動きが影響しています。特に上場企業では女性管理職比率や男女間賃金格差の開示が義務化され、2026年度からは従業員101人以上の未上場企業にも公表義務が拡大されます。これにより、企業は女性をより積極的に管理職に登用したり、男女間の賃金差を縮小したりする動きを加速させています。結果として、これまで男性中心だったポストに女性が就いたり、手当がつく役職に女性が登用されたりすることで、女性の給与が上昇するケースが増えています。
男女問わず、経験豊富な50代のセカンドキャリアに対する企業の需要も高まっています。特に特定の専門スキルやマネジメント経験は、人手不足が進む中で企業にとって貴重な戦力となり得るからです。
資格だけではない道:リカレント講座の「修了証」を活用
では、給与アップを伴う50代転職を成功させた人々は、具体的にどのようなアプローチをとったのでしょうか。難しい資格試験に挑むのではなく、講座の受講と修了証の取得を有効活用したケースが増えています。
すべての転職において難関資格が必須なわけではありません。現在のビジネス環境で求められる特定のスキルや知識を体系的に学べるリカレント講座や専門的な研修は多数存在します。これらの講座を受講し、修了証を得ることは、履歴書上で学習意欲や最新の知識・スキルをアップデートしていることを示す強力なアピールポイントとなります。資格試験のような合否のプレッシャーが少ないため、学習を継続しやすく、自信を持って転職活動に臨むことにも繋がります。
企業側も、必ずしも権威的な資格だけでなく、職務に直結する実践的なスキルや、新しい分野への適応力、学習意欲を重視する傾向にあります。リカレント講座の修了は、これらの要素を効果的に伝える手段となり得ます。
まとめ:50代からの転職は希望を持てる時代へ
50代からの転職は、確かに独自の難しさがありますが、「給料が下がるもの」という固定観念は必ずしも現実と一致しません。人手不足や企業における多様性推進の動きを背景に、経験豊富な人材へのニーズは高まっています。
成功への鍵は、必ずしも難易度の高い資格取得だけにこだわるのではなく、自身の経験を棚卸し、市場価値のあるスキルを補完するためのリカレント教育や講座受講などを柔軟に取り入れることにあります。関連性の高い講座の修了証は、あなたのポテンシャルと学習意欲を企業に示す有効なツールとなり得ます。
不安を抱えながらも、データが示すように、50代からの転職で収入アップを実現し、セカンドキャリアを成功させている人々は確実に存在します。変化を恐れず、自身に合った形で学びを深め、その成果を積極的にアピールすることが、希望する未来を切り開く道となるでしょう。