米国のトランプ前大統領の就任100日を目前に、国際政治学者のイアン・ブレマー氏が読売新聞のインタビューに応じ、”米国第一主義”を掲げるトランプ政権下における米国の機能不全と、国際秩序における「Gゼロ」時代の本格的な到来について警鐘を鳴らしました。本記事では、ブレマー氏の分析を紐解きながら、Gゼロ時代における国際社会の動向と日本の取るべき戦略について考察します。
Gゼロ時代とは何か？
ブレマー氏は2012年に「Gゼロ」という概念を提唱しました。これは、世界を主導する国家や国家群が存在しない状態を指します。かつては米国が国際秩序のリーダーとしての役割を担っていましたが、トランプ政権下では、パリ協定やWHOからの離脱表明に見られるように、国際協調よりも自国利益を優先する姿勢が鮮明になりました。ブレマー氏は、「他のどの国も米国に取って代わることができない」としながらも、この状況がまさに「Gゼロ」時代であると分析しています。
トランプ前大統領（27日）＝AP
Gゼロ時代の勝者は中国？
ブレマー氏は、Gゼロ時代の長期的な受益者は中国であると断言しています。米国の影響力が低下する一方で、中国は経済力と軍事力を強化し、国際社会における存在感を高めています。国際政治アナリストの佐藤恵子氏も、「米国の不在は、中国が国際的なルールメイキングを主導する機会を増やすことになる」と指摘しています。
米国の「評判の力」の低下
ブレマー氏は、米国の国際的な力は経済力や軍事力だけでなく、「評判の力」によっても支えられていると指摘します。従来、米国大統領は、どの政党の出身であろうとも、国際社会からの信頼を得ていました。しかし、トランプ氏の政治手法は、この「評判の力」を破壊しているとブレマー氏は懸念を示しています。「力があれば望む結果を得られる」というトランプ氏の主張は、「地政学的な自傷行為」であり、弱い国々を振り回すことで米国の信頼性を損なっていると批判しています。
ユーラシア・グループ提供
貿易戦争に勝者はいない
トランプ政権が導入した「相互関税」は、世界経済に不確実性をもたらし、経済成長を阻害する要因となっています。ブレマー氏は、「貿易戦争に勝者はいない」と強調し、保護主義的な政策は ultimately 世界経済全体に悪影響を及ぼすと警告しています。経済学者の田中一郎氏も、「関税合戦の長期化は、世界的なサプライチェーンの混乱を招き、最終的には消費者の負担増につながる」と警鐘を鳴らしています。
日本はどう対応すべきか？
ブレマー氏は、日本、韓国、ベトナムなどの国々は、米国との関係において「リスク軽減（ディリスキング）」に注力すると予測しています。つまり、これらの国々は、米国と中国の双方との関係を維持しながら、過度な依存を避ける戦略をとる可能性が高いということです。 国際関係学教授の山田花子氏も、日本は「多角的な外交戦略を展開し、米国だけでなく、中国やASEAN諸国との関係強化にも努めるべきだ」と提言しています。
Gゼロ時代を生き抜くために
Gゼロ時代は、国際秩序が不安定化し、予測不可能な時代です。日本は、ブレマー氏の分析を踏まえ、戦略的な外交を展開し、国際社会におけるプレゼンスを高めていく必要があります。 変化の激しい国際情勢の中で、日本がどのような役割を果たしていくのか、今後の動向に注目が集まります。
