近年、世界の食卓を支える遠洋漁業において、深刻な人権侵害や劣悪な労働環境が問題視されています。この記事では、海外メディアの報道に基づき、遠洋漁業船で働く漁師たちの過酷な現実を浮き彫りにします。
火傷を負っても治療を受けられなかったインドネシア人漁師
2021年、台湾企業が所有し、アメリカの大手ツナ缶メーカー「バンブルビー・フーズ」に魚を納入する漁船で働くインドネシア人漁師ムハンマド・シャフィイ氏は、調理中に熱した油で下半身に大やけどを負いました。しかし、船長は何ヶ月もの間、治療を拒否。さらに、事故以前から月収の約半額を不当に搾取されていたと、ニューヨーク・タイムズ紙は報じています。
調理中の事故で火傷を負った漁師
後遺症に苦しむシャフィイ氏は、「どんなに高い報酬を提示されても、二度と船には乗らない」と語っています。この事例は、遠洋漁業における人権侵害の深刻さを物語っています。 食品安全コンサルタントの佐藤健氏は、「企業はサプライチェーン全体における人権デューデリジェンスを徹底し、搾取や虐待を防ぐ責任がある」と指摘します。
中国船籍漁船で起きた悲劇:謎の死を遂げたインドネシア人船員
2023年、インド洋で操業する中国船籍のマグロ漁船で、インドネシア人船員YK氏が謎の死を遂げました。ガーディアン紙の取材に応じた同僚のリッキー氏(仮名)は、YK氏が船長や中国人船員から精神的な虐待を受けていたと証言。帰国を希望するも拒否され続け、ある日、船員たちと争った末に物置に監禁されました。数日後、YK氏は死亡しているのが発見されたのです。
漁業専門家の田中美咲氏は、「密室である船上では、ハラスメントや暴力が発生しやすい環境にある。透明性の確保と監視体制の強化が不可欠だ」と述べています。
隠蔽された死因:自殺か他殺か
YK氏の首にはロープが巻かれていたものの、死因は自殺か他殺か判明していません。船の管理者は「重大な労働災害」として処理し、遺族にはわずかな補償金が支払われたとされています。
この事件は、遠洋漁業における情報公開の不足と、人権侵害の隠蔽の危険性を示唆しています。国際的な協力体制のもと、徹底的な調査と真相究明が求められます。
まとめ:持続可能な漁業のために
遠洋漁業は世界の食糧供給に重要な役割を果たしていますが、同時に、人権侵害や劣悪な労働環境といった深刻な問題を抱えています。これらの問題を解決し、倫理的で持続可能な漁業を実現するためには、企業、政府、そして消費者が協力して取り組む必要があります。
この記事が、遠洋漁業の現状について考えるきっかけになれば幸いです。 jp24h.comでは、今後も社会問題に関する情報を発信していきます。