永田町はすっかり参議院議員選挙モードである。都議選で躍進した参政党が「台風の目」とされ、選挙区でも議席を獲得する勢いだという。一方、自民党に対する逆風は日に日に強さを増しており、自公過半数割れを危ぶむ声も。選挙後には政局に大きな嵐が吹き荒れそうである。前編では選挙区の注目候補について当落予測と共に紹介した。本稿では比例代表区に目を転じ、その注目候補者と各党の動きを探る。
参院選で注目される参政党の須藤元気氏
蓮舫氏の比例区出馬とその背景
比例区において、最も注目を集める候補者の一人が、立憲民主党から立候補する蓮舫氏(57)である。彼女は昨年、長年務めた参議院議員の職を辞し、東京都知事選挙に挑戦したが、結果は165万票を獲得して次点となった石丸伸二前広島県安芸高田市長に及ばず、獲得票数は128万票で3位に沈む形となった。都知事選敗戦後、蓮舫氏は自身のSNS上で「国政選挙はもう考えていない」「120万を超える人が「蓮舫」と書いてくれた。これで国政に戻ったら渡り鳥みたいだ」と投稿し、国政への復帰を明確に否定していた。それから間もなく、一転して参議院議員比例代表区での出馬へと踏み切ったのである。
立憲民主党内の動揺と支援組織・連合の懸念
蓮舫氏の比例区からの出馬は、彼女が所属する立憲民主党内に少なからぬ波紋を広げている。立民関係者によると、「党内の一部には依然として“蓮舫アレルギー”とも呼べる感情があり、彼女の国政復帰を心から歓迎するムードではない」という。最終的には野田佳彦代表(68)が党内の反対論を押し切る形で出馬が決定されたものの、異論の声が完全に消えたわけではない。さらに深刻なのは、立憲民主党の主要な支援組織である連合傘下の産業別労働組合(産別)関係者の間に広がっている危機感である。彼らは、「蓮舫氏が比例に回ったことで、組織内で擁立した産別候補者が落選するのではないか」と強く懸念している。これには、参議院比例代表選挙の仕組みが関係している。立憲民主党は、前回2022年の参院選比例区で7議席を獲得した。今回、党は6名の産別の組織内候補と、立正佼成会の組織内候補1名を合わせて計7名の候補者を擁立している。もし今回の参院比例での当選者数が前回と同様に7議席にとどまった場合、蓮舫氏がその当選枠に入り込むことで、産別が推す候補者の誰かが当選圏外にはじき出される可能性が高まるのである。特に、2019年の参院選で10万票余りの獲得にとどまった私鉄総連組織内候補の森屋隆参議院議員(58)は、その議席が危ぶまれていると指摘されている。
まとめと今後の展望
蓮舫氏の参院選比例区への出馬は、立憲民主党内部だけでなく、長年の支援組織である連合との間にも緊張関係を生じさせている。都知事選敗北後の「国政に戻らない」という発言からの急な方針転換は、有権者からの信頼性にも影響を与える可能性がある。しかし、彼女の知名度は比例区において大きな票の上積みをもたらす可能性も秘めている。それが既存の組織内候補の議席を脅かす形となっている現状は、立憲民主党が比例代表選挙で直面している複雑な構図を浮き彫りにしている。今後、各候補者がどのように票を積み上げ、この内部的な軋轢が選挙結果にどう影響するのか、比例区の行方が注目される。