心臓カテーテル治療後の合併症で夫を亡くした妻、JA愛知厚生連を提訴 ― 1億円超の損害賠償請求

豊田市在住の50代女性が、夫(当時49歳)が豊田厚生病院での心臓カテーテル治療後に合併症で亡くなったとして、病院を運営するJA愛知厚生連に約1億1648万円の損害賠償を求め、名古屋地裁に提訴しました。この悲劇的な出来事は、医療現場における注意義務の重要性を改めて問うものです。

亡くなった夫の妻が会見の様子亡くなった夫の妻が会見の様子

治療経過と合併症の発症

訴状によると、男性は2020年11月に発作性心房細動と診断され、翌月に豊田厚生病院でカテーテルアブレーション治療を受けました。しかし、2021年1月に高熱と嘔吐で救急搬送され、多発性脳梗塞を発症。その後、心臓と食道に穴があく左房食道瘻の可能性が認められ、外科手術が行われましたが、遷延性意識障害の状態が続き、2023年10月に別の病院で急性腎不全のため亡くなりました。

遺族側の主張:病院側の注意義務違反

遺族側は、担当医が治療方法の選択肢を十分に説明せず、リスクの高い「BOX隔離術」を無断で実施したと主張。さらに、術後の予防薬投与や生活指導の不足、診断と治療の遅れなど、病院側に複数の注意義務違反があったと指摘しています。

心臓カテーテル手術のイメージ心臓カテーテル手術のイメージ

左房食道瘻:稀だが致死率の高い合併症

左房食道瘻は、心臓カテーテルアブレーション治療に伴う稀な合併症で、発生率は0.02%程度とされています。しかし、一度発症すると致死率が非常に高く、医療現場では発生防止のための徹底した注意が求められています。「心臓カテーテル治療ガイドライン」においても、この合併症のリスクと予防策について詳細に記載されています。

専門家の見解

心臓血管外科専門医の佐藤先生(仮名)は、「左房食道瘻は稀な合併症とはいえ、発生した場合の致死率の高さから、医療従事者は常にそのリスクを念頭に置き、予防策を徹底する必要があります。患者への十分な説明と同意、適切な術後管理が不可欠です」と述べています。

妻の悲痛な訴え:真実を知りたい

提訴後の会見で妻は、「夫はより健康に生きるために治療を受けたのに、なぜ亡くならなければならなかったのか。真実を知りたい」と涙ながらに訴えました。病院側からは明確な説明がなく、医療事故調査も断られたとのことです。

JA愛知厚生連の対応

JA愛知厚生連は、「個別の案件についてはコメントできない。訴状が届き次第、必要に応じて対応する」とコメントしています。今後の裁判の行方と、医療現場における安全管理体制の改善に注目が集まります。

心臓カテーテル治療:更なる安全対策の必要性

この事件は、心臓カテーテル治療における合併症のリスクと、医療現場における安全対策の重要性を改めて浮き彫りにしました。患者と医療従事者間のコミュニケーションの徹底、そして医療技術の向上と安全管理体制の強化が求められています。