【カイロ=佐藤貴生】イスラエルがパレスチナ自治区ガザへの支援物資の搬入を全面停止していることなどを巡り、オランダ・ハーグの国際司法裁判所(ICJ)で公聴会が開かれている。ガザでは食料も燃料もなくなりつつあり、多くの国が飢餓の深刻化への懸念を表明している。
イスラエルは3月2日、イスラム原理主義組織ハマスがガザで拘束する人質解放の継続を拒否したとして、支援物資のガザ搬入を完全に停止した。
公聴会は4月28日から5月2日までの日程で、約40カ国が意見を陳述。パレスチナの代表は、イスラエルが人道支援を「兵器」として使っていると非難した。国連の法律顧問はパレスチナはイスラエルの占領下にあると指摘し、イスラエルについて「住民の利益になる国連の活動を認める義務がある」と述べた。
これに対し米国は、治安を脅かしかねない組織の支援活動を受け入れる義務はないと主張し、同盟国イスラエルを擁護した。国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の一部職員が約1年半前、ハマスのイスラエル奇襲に関与した疑いが浮上したことを念頭に置いた発言とみられる。
中東の衛星テレビ局アルジャジーラによると、米国とハンガリー以外の国々はほぼイスラエル批判を展開。イスラエルはICJについて「自衛権という最も基本的な権利を否定する狙いだ」(サール外相)と反発し、公聴会への出席を拒否した。
ガザへの物資搬入が遮断されて約2カ月となり、現地からの映像では食料の配給所で住民が食べ物を得ようと押し合う事態が日常化している。世界食糧計画(WFP)はガザの備蓄食料が底を突いたとし、国連は「全面的な飢餓」の懸念があると指摘する。
ガザ当局によると、飢えや栄養失調で子供ら50人以上が死亡し、少なくとも6万人に栄養失調の兆候がみられる。
カタールやエジプトが仲介するイスラエルとハマスの停戦が実現するかどうかは不明で、双方の駆け引きが続くなかでガザ住民の生存が厳しさを増している形だ。
ICJは国連の主要な司法機関で、公聴会は昨年12月、国連総会がイスラエルの対応に関して法的見解を求める決議を採択したのを受けて開かれた。
ICJの判断に法的拘束力はないが、イスラエル有力紙ハーレツ(電子版)は4月末、内容次第ではイスラエルに何らかの制裁を科したり、国連の資格の一時停止を求めたりする国際的な動きが加速する恐れもある、という国際法の専門家の談話を紹介した。