フィンランド発!デジタル教科書の光と影:高校での普及と意外な転換点

フィンランドといえば、デジタル教育先進国として知られています。しかし近年、その教育現場で静かな変化が起きていることをご存知でしょうか?本記事では、フィンランドにおけるデジタル教科書の現状と、その意外な転換点について詳しく解説します。

デジタル教科書の普及率:高校で圧倒的なシェア

フィンランド出版協会のデータによると、2024年の教材全体の売り上げにおけるデジタル教材のシェアは36.6%と、2020年の21.3%から大幅に増加しています。特に高等学校では、その普及率はなんと87.1%!小学校や中学校では子どもの発達段階を考慮し紙の教科書が依然として主流ですが、高等学校ではデジタル教科書が圧倒的なシェアを占めているのです。

alt: フィンランドの教室で生徒たちがタブレット端末を使って学習している様子alt: フィンランドの教室で生徒たちがタブレット端末を使って学習している様子

大学入学資格試験のオンライン化が普及のきっかけ

このデジタル化の波は、2016年から段階的に始まった大学入学資格試験のオンライン化がきっかけとなりました。2019年には完全オンライン化が実現し、高等学校におけるデジタル教科書の需要が急増したのです。さらに、2021年には高校教科書の無償化が実施され、自治体や学校がまとめてデジタル教科書を購入するモデルへと移行。これがデジタル化をさらに加速させました。以前は生徒個人が教科書を購入していましたが、無償化によって自治体や学校がデジタル教科書の導入を積極的に推進するようになったのです。

意外な転換点:リーヒマキ市の決断

デジタル教科書の普及が進むフィンランドですが、ある自治体の決定が大きな注目を集めています。首都ヘルシンキから電車で約1時間のリーヒマキ市では、デジタル教科書への移行を見直す動きが出ているのです。

中古教科書市場の衰退

デジタル教科書の普及は、一方で中古教科書市場の衰退も招きました。かつては高校生にとって中古教科書は貴重な存在であり、専門の書店まで存在するほどでした。しかし、デジタル教科書の普及により、このリサイクル文化は徐々に失われつつあります。

alt: デジタル教科書を閲覧している高校生の様子alt: デジタル教科書を閲覧している高校生の様子

デジタル化のメリットとデメリット

デジタル教科書は、動画や音声、インタラクティブなコンテンツなどを活用できるというメリットがあります。一方で、画面の見過ぎによる目の疲れや、デジタル機器への依存といったデメリットも指摘されています。「教育におけるICT活用研究会」の代表、山田先生は、「デジタル教科書は学習効果の向上に役立つ一方、適切な活用方法を検討する必要がある」と述べています。

フィンランドの教育の未来

フィンランドの教育現場は、デジタル化の波と向き合いながら、そのメリットとデメリットを慎重に見極めようとしています。リーヒマキ市の決断は、デジタル教科書一辺倒ではなく、生徒にとって最適な学習環境を提供するための模索と言えるでしょう。今後、フィンランドの教育がどのような方向へと進んでいくのか、引き続き注目していく必要があります。