ファーウェイが中国深圳市に大規模な半導体工場群を建設しているというニュースが世界を駆け巡っています。米国の輸出規制が、かえって中国の技術力向上を後押ししているのでしょうか?この記事では、その真相に迫り、今後の世界経済への影響について考察します。
ファーウェイの野望:半導体垂直統合でAIチップ開発を加速
フィナンシャル・タイムズ(FT)の報道によると、ファーウェイは深圳市観瀾地域に3つの最先端半導体工場を建設中とのこと。衛星写真からもその動きが確認されており、半導体設計から製造、後工程までを自社で完結させる「垂直統合」を目指している可能性が指摘されています。
深圳市におけるファーウェイ関連施設の衛星写真
FTは、ファーウェイがこれらの工場のうち1つを直接運営し、残りの2つは半導体製造装置メーカーの新凱来技術(SiCarrie)とメモリーチップメーカーの昇維旭技術(SwaySure)が運営していると報じています。ファーウェイはこれらの企業との関係を否定しているものの、水面下での連携が疑われています。
独自技術開発への布石?SiCarrieとSwaySureとの関係
新凱来技術は、半導体製造に不可欠なリソグラフィ装置を開発する企業です。ファーウェイが同社との連携を強めている背景には、米国の輸出規制により最先端チップ製造に必要なEUV露光装置の輸入が困難になっている現状があります。つまり、ファーウェイは独自に製造装置を開発する道を模索していると考えられます。
一方、昇維旭技術はDRAMメーカーであり、現在HBM(高帯域幅メモリー)の積層パッケージング技術を開発中とされています。ファーウェイは、HBMも自社生産することで、AIチップ開発に必要なエコシステムを構築しようとしているのかもしれません。
米国企業の懸念:中国の技術力向上は脅威となるか
ファーウェイの動きに、米国企業は強い危機感を抱いています。NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは、米国の輸出規制が中国の技術革新を加速させ、米国の技術的優位性を脅かしていると警鐘を鳴らしています。
ファーウェイの技術力:NVIDIA CEOも警戒
フアンCEOは、ファーウェイを「世界で最も強力な技術企業の一つ」と評価し、中国のAIチップ開発能力は米国に匹敵するレベルに達していると指摘しています。ファーウェイは既に、米国の輸出規制を受けて独自OS「鴻蒙(HarmonyOS)」を開発しており、AIチップ開発においても同様の戦略をとる可能性があります。
ファーウェイが開発したとされるAIチップ
今後の展望:米中技術覇権争いの行方は
ファーウェイの半導体工場建設は、米中技術覇権争いをさらに激化させる可能性があります。中国が独自の技術で半導体サプライチェーンを構築できれば、米国の影響力は低下し、世界経済の勢力図も大きく変化するでしょう。今後の動向に注目が集まります。