「日本では中身が似通ったビルが乱立している」建築家・重松象平が虎ノ門ヒルズ ステーションタワーに託したメッセージとは?


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牡蠣殻を建材に活用したい

 しかし、そもそも建築家というのは、元々イニシアティブを取る機会が非常に少ない職業です。クライアントの発注ありきの職業なので、建築家自身が起業家的精神を持って自ら事業を計画し、設計もやることは、そう多くない。当然、大学でもイニシアティブを取るための自発的な教育はほとんど行われていません。しかし私は、世の中の課題が多様化する中で、建築がそれらの課題を解決し、環境や経済など社会全体に良い影響を及ぼす可能性は大きくなっていくと考えています。

 BeCATでは現在、牡蠣の殻を活用した建材づくりに着手しています。糸島にはたくさんの牡蠣小屋がありますが、そこで捨てられる大量の牡蠣の殻が産業廃棄物として問題になっています。地域にこうした課題があると知って、我々と学生たちは牡蠣の殻を建材に活用できないか、地元の建材メーカーに話を持って行きました。協議を重ねながら、セメントと牡蠣の殻を混ぜ合わせた建材用タイルを開発し、現在、商品化を目指し試験を重ねています。

 このように、建築家はクライアントからの依頼を待つだけでなく、自ら課題を発見し、それを解決するために技術を活用することが可能です。たとえ社会的な大きな課題でなくても、例えば日差しが強すぎる住宅の問題を、環境シミュレーションを用いて解決することもできます。建築家の可能性は非常に大きく、社会に貢献できるという認識を、学生自身が早期に身につけ、また社会に理解してもらうことで、従来の「箱物を作るだけの建築家」というイメージが変わっていくのではないかと考えています。



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