名曲とは、単なるセールスやチャート成績だけでは測れない。ファンが心から愛し、人生に重ねてきた楽曲が、“記憶に残る名曲”として語り継がれることも多い。これまで数多くのアーティストがファン投票によるベストアルバムを制作し、そこにはヒットの大小を超えたリアルな支持が刻まれているのだ。
【写真】GLAY、デビュー30周年で輝きを増すロックバンドの姿
■GLAY
GLAYは昨年デビュー30周年を迎え、活動を前半と後半で二分したファン投票ベスト『DRIVE 1993~2009 -GLAY complete BEST』『DRIVE 2010~2026 -GLAY complete BEST』を今年4月24日に同時発売した。対象は400曲を超え、総投票数も6万5000票超。得票順がそのまま収録順になるという「ファンとともに作る」というルールが採用され、SNSではカウントダウン形式で順位が一曲ずつ解禁されるたびにタイムラインが歓声で埋め尽くされた。結果、前期盤の首位に立ったのが「pure soul」、後期盤の頂点が「疾走れ!ミライ」である。ヒットチャートとは別の“心の指標”が浮き彫りになった瞬間だった。
1998年発表の「pure soul」は、GLAYを代表する楽曲のひとつ。アルバム『pure soul』のタイトルチューンであり、ファンから圧倒的支持を得ている楽曲だ。歌詞には人生観や友情、希望といったテーマが織り込まれ、シンプルながら力強いメロディが心に響く。TAKURO(Gt)は、ファン投票の結果について「なるほど。10位までがメロウ」「やっぱり“優しさロック”ですねぇ」と語っており(※1)、この曲に象徴される優しさと熱さが同居したロックサウンドこそがGLAYの真骨頂だと言えるだろう。HISASHI(Gt)も「メロディがハッキリしてる曲、強いね」と述べており、伸びやかでドラマティックなメロディラインを持つ「pure soul」はまさにその典型だ。
ライブでも重要なシーンで披露されるナンバーであり、TERU(Vo)の魂のこもった歌唱と楽器陣の熱い演奏が生み出す名場面は、ファンにとって忘れられないものとなっている。こうした背景から、GLAYファンにとって「pure soul」は特別な心のアンセムであり、投票でも堂々1位に選ばれたのは頷ける結果である。派手さよりも心に染み入るような優しさとメッセージ性を持ったこの曲は、まさにGLAYとファンが共有してきた30年の歴史を象徴する一曲なのだ。
対して「疾走れ!ミライ」は、2014年に発表されたGLAYの51stシングル『百花繚乱/疾走れ!ミライ』に収録された曲で、近年のGLAYを代表する爽快なロックチューンである。TERUが作詞作曲を手がけ、アニメ『ダイヤのA』(テレビ東京系)のオープニングテーマにも起用されたことでも話題となり、作品への愛と情熱が歌詞にも反映されている。曲調はタイトル通り疾走感にあふれる爽やかなロックサウンドで、未来へ向かって走り出す若者たちへのエールが込められたポジティブな歌詞が印象的だ。GLAYらしいキャッチーさと力強さを併せ持ち、ライブでも観客を一気に沸騰させるエナジーを持っている。実際、最新のツアーでも披露され、TERU自身も「今回のアリーナツアーで印象的だった」と語っている。そうしたライブでの高揚感や、一緒に未来へ突き進もうという前向きなメッセージがファンの心を掴み、後期盤で見事1位に輝いたと言えるだろう。バンドの新たな代表曲として、長年応援してきたファンのみならず、アニメを通じてGLAYを知った新たな世代まで幅広く支持されたことが、この順位にも表れている。TERUが「10年後も歌う」と公言するほど思い入れの強い曲でもあり、その宣言通り未来のライブでも歌い継がれていくであろう、希望に満ちたロックアンセムである。
■B’z
2008年にリリースされたB’zの20周年記念のファン投票ベストアルバム『B’z The Best “ULTRA Treasure”』で見事第1位に輝いたのが、1999年発表の同名アルバムの表題曲でもある「Brotherhood」だ。このリクエスト企画には全290曲を対象に40万以上もの応募があり、その頂点に「Brotherhood」が選ばれたことは特筆すべき出来事である。派手なヒット曲が数多く存在するB’zのなかで、シングルカットされていないアルバム収録曲の本作が1位となった背景には、この曲が持つ特別なメッセージ性とファンとの絆がある。
「Brotherhood」=“兄弟愛”というタイトルが示す通り、歌詞には「離れていても繋がっている仲間」といったテーマが込められており、2011年の東日本大震災直後の『ミュージックステーション』(テレビ朝日)特番でB’zがこの曲を披露した際には、楽曲に込められた“祈る”のではなく“ともにいる”という強いメッセージが大きな反響を呼んだ。重厚なギターリフと力強いボーカルで奏でられるこのロックバラードは、ステージでもファンとメンバーの心をひとつにするアンセムとして機能している。ライブ終盤で観客と大合唱になるシーンはお馴染みで、長年支えてくれたスタッフや仲間、ファンへの感謝と友情を歌うこの曲に多くのファンが勇気づけられてきた。ファン投票で1位に選ばれた理由もまさにそこにあり、華々しいヒット曲以上にB’zを象徴する精神が込められた「Brotherhood」は、ファンにとってかけがえのない一曲なのである。絆のロックアンセムとして、これからも色褪せることなく支持され続けるだろう。