【ベルリン=工藤彩香】ドイツ連邦議会(下院、定数630)は6日、オラフ・ショルツ首相(66)の後継となる新首相に、中道右派・キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)のフリードリヒ・メルツCDU党首(69)を選出した。メルツ氏は首相就任が確実視されていたが、1回目の投票で首相選出に必要な議会過半数(316)に届かず、2回目の投票で選出された。
メルツ氏の得票は、1回目が310票、2回目が325票だった。複数の地元メディアは、1回目の投票で首相が選出されなかったのは戦後ドイツ史上初めてで、「異例の事態」だと報じた。メルツ氏の求心力は低下しており、早期の立て直しが求められる。
新政権で連立を組むCDU・CSUと、中道左派・社会民主党(SPD)の議席は計328議席。両陣営は、移民対策や年金などの社会福祉政策を巡る隔たりが大きいと指摘されており、保革大連立に反発する造反者が出たことが投票に影響した模様だ。
トランプ米政権の「欧州離れ」や関税政策など、ドイツが対応すべき課題は山積している。メルツ氏は「行動力ある政府」として首相就任直後から精力的に課題解決に取り組むと強調してきたが、早くもつまずいた格好だ。
メルツ氏は6日夕、大統領の任命を受け、その後、連邦議会で就任宣誓を行った。同日中にも新政権が発足する。CDU所属の首相誕生は、2005~21年に長期政権を築いたアンゲラ・メルケル氏以来となる。